「会社に残りたいなら給与は今の6割」→迷わず退職を決意

佐藤さんは、何百冊もの書籍を編集し、ベストセラー作家のデビュー作を何冊も世に送り出した有名出版社の元編集長です。

55歳が間近に迫ったある日、佐藤さんは大きな会議室に呼ばれました。

そこには、数多くの同い年の同僚が集められ、60歳定年後の身の振り方をたずねられます。60歳以降も会社に残るのなら、今後5年間の収入はこれまでの6割程度に減るというのです。

佐藤さんは、迷わず60歳定年退職を選んだそうです。ただそのときは、60歳以降の具体的な「キャリアプラン」は何も描いていませんでした。

58歳で「編集長」→「校閲室」へ異動の命令…腐らずに“勉強”と捉えた佐藤さん

その後、58歳になった佐藤さんは、「校閲室」への異動を命じられました。校閲とは、出版前の印刷物のミスを見つけて校正したり、より読者が読みやすい文章にする仕事です。編集のクリエイティブな仕事とは違い、いわば縁の下の力持ち的な地味な仕事です。

しかし佐藤さんは、「これも勉強。新しいスキルを身につける好機」と、潔く会社からの提案を受け入れ、コツコツ校閲の技術を身につけていきます。

そんなあるとき、知り合いの出版プロデューサーに声をかけられ、出版セミナーの講師を務めることになりました。本を出版したい人たちに「編集者が思わず出版したくなる出版企画書の作成方法」をテーマに話したところ、評判は上々。

そこで佐藤さんは、「自分の編集能力は、出版コンサルタントとして、本を出版したい著者のたまごを発掘することに活用できそうだ」と強く感じたのです。

それからというもの、出版コンサルタントになるための準備を着々と進めました。

一方で、勤めている校閲室での仕事も着実にスキルアップしていき、「1年間出版事故がひとつもない」サポートをしたことから、校閲室が社長賞を受賞するという快挙を成し遂げました。

2年間の入念な準備ができたころ、60歳の定年退職。佐藤さんは、新人作家発掘の出版コンサルタントとして起業し、会社員時代と同等以上の収入を得ています。