早期退職や役職定年は、セカンドキャリアについて考える良いタイミングです。とはいえ、50代から「新たなキャリア」を築くことに抵抗や諦めといった感情を抱いている人も少なくありません。そこで、人材開発コンサルタントである田原祐子氏の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、50歳の早期退職後に飲食店を開業した、元食品会社事務の女性の事例をみていきましょう。
50歳で食品会社の事務を早期退職→〈1日5食限定の釜めし屋〉を開業した女性…「一人暮らしの生活費をまかなえれば十分」のつもりが“予想外の大繁盛”となったワケ【人材開発コンサルタントが解説】
早期退職後、好きなことを仕事に…想定外の展開に
千葉さんは、食品会社で事務を手がけていました。さまざまな食品を扱う卸問屋で、倉庫に行けば、いろいろな食品が並んでいます。
「食品に囲まれているとしあわせ。という千葉さんは無類の料理好き。食品会社が年に一度、地域の住民向けに開催する「ふれあいバザー」では、郷土料理の担当として来場者に振る舞うなど、大活躍していました。そんな千葉さんにも、50歳の早期退職の話が持ちかけられました。
シングルマザーとして育ててきた子どもたちも独り立ちし、日ごろから、「あとは、余生を楽しく過ごすだけ」と、漠然と考えていた千葉さんは、これを機会に会社を辞めることを決断します。
そして、なんと親戚が保有する山奥の小さな古民家の一軒家で、「釜めし屋」を開くことにしたのです。小さな一軒家なので、「1日5食限定」でのスタート。
なぜ、釜めしかとたずねると、「材料を火にかけて蒸らすだけでできて、従業員もいらないから」とのこと。また、1日5食×800円なら、4,000円の収入になる。
家賃は、月1万円。材料費は1日1,000円もかからないから、千葉さんの一人暮らしの生活費としては十分、という腹づもりでスタートしたのだそうです。
ところが、ありがたいことに、「山奥にある、1日5食限定の釜めし屋」という珍しさと、美味しい釜めしにつられて、連日お客様がひっきりなしに来店するほどに繁盛することに。
そして、1年後には従業員も3名雇い、隣の母屋まで借りて店舗を拡張しました。
今は、バスで駅から店まで送迎するほどに大繁盛しています。
料理好きで腕前にも定評があった千葉さんの「無形資産」が活きた成功事例と言えるでしょう。