平均寿命が延び続ける日本では、年々「老後」の期間が長くなっています。そこで考えておきたいのが「定年後のキャリア」です。人材開発コンサルタントである田原祐子氏の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、役職定年後もスキルアップを重ね、60歳で起業した佐藤さんの事例をみていきましょう。
60歳で定年退職→同業種で起業…出版社の元編集長が“ワンランク上”のキャリアを手に入れられたワケ【人材開発コンサルタントが解説】
サラリーマン→起業を実現した佐藤さんが成功した理由
「家が編集室なので、満員電車に乗って会社に行かなくても、同じように編集作業ができます。というのも、コロナ禍を経て、ネットを利用したさまざまな編集ツールも充実したので、人とリアルに会わなくても、以前より効率よく仕事がこなせるんです。
私がそのように仕事ができるのは、長年積み重ねた人脈、企画力、編集力に加え、校閲スキルも強みとして活かせているからだと思います。
他の出版コンサルタントとの差別化を図るためには、どんな業種もそうだと思いますが、自分の強みを見つけ、いかに伝えることができるかだと思います。
会社員時代と違い、多くの出版社の編集者と仕事ができるので、発想力も広がり、ますます編集という仕事が好きになりました。健康に気をつけて、生涯現役で働きたいですね」
佐藤さんは、独立した今、「仕事が趣味です!(笑)」と、AIからビジネス、ゴルフ、子育て、自己啓発、スピリチュアルまで、さまざまな分野の著者発掘や書籍編集に充実の日々を送っています。
定年間際に異動→目的意識をもった結果“ワンランク上”のキャリアを実現
55歳が近づいてきたら、「役職定年」を迎える「心の準備、次の仕事の準備、お金の準備」をしておきたいものです。
佐藤さんの場合は、何の準備もない状態で不意を突かれ、さぞ驚かれたことでしょう。しかし、立派なのは校閲室に異動になってもめげず、「校閲のスキルを学ぶいい機会」と前向きに取り組まれ、同時進行でセカンドキャリアの準備をしたことです。
起業後も、出版社の編集者時代に築かれた人脈や編集力、企画力を存分に活かして仕事をされている素晴らしい事例です。
田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者