高齢になるにつれて「死」を意識する機会も増えてきます。しかし、実際に、不慮の事故に遭遇するなど、不幸な経験をした人に話を聞くと、「むしろ有益だった」と答えることが少なくない、と心理学者の内藤誼人氏は言います。内藤氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、詳しく見ていきましょう。
歳を重ねると想定外のアクシデントに遭遇することもあるが…「死」を意識することで生じる〈ポジティブな効果〉とは?【心理学者が助言】
お年寄りにとって「太陽の光を浴びること」が大切なワケ
天気がよいときには、できるだけ外に出てみましょう。太陽の光を浴びるのは、まことに気分がよいものですし、とても晴れやかな気持ちになリますよね。
イランにあるテヘラン大学のナイエラ・コラミンヤは、40名の大うつ病性障害の外来患者を対象に、1,500IUのビタミンDを処方し、2週間おきにうつの症状を測定してみたところ、状態が改善されたという報告をしています。
ビタミンDはうつを改善してくれる効果があるのですが、ビタミンDは日光浴をすることで生成されます。だれでも天気の良い日に外に出ていると、「うわぁ、気持ちがいいなあ」と感じると思うのですが、それは体内で生成されるビタミンDが影響しているのです。
うつ病になると、抗うつ剤を処方されるわけですが、別に抗うつ剤など処方しなくとも、日光浴をしていれば、自然にうつ状態も軽減するでしょう。
朝散歩をしながら太陽の光を浴びるのが特におすすめですが、それが難しい場合はベランダに出たり、カーテンを開けて光を取り入れるのもいいでしょう。
世界的なコロナウイルスのパンデミックのときには、政府から「できるだけ外出を控えるように」という通達が出されました。ウイルスに感染しないようにするためにはしかたがないという側面もありましたが、外出を控えることによって、うつに近い状態になる人も増えました。
お日さまの光を浴びないと、私たちは調子が狂ってしまうのです。
お年寄りになると、気分が落ち込んでしまう人も多くなるのですが、その原因の一つは、外出不足かもしれません。できるだけ外に出て、お日さまの光を浴びるようにしているお年寄りでは、うつ状態になることも少なくなるはずです。
米国セントラル・ミシガン大学のミヤン・アンは、アメリカ人とインド人を対象にして、勤務時間中にどれくらい太陽の光を浴びるのかを聞いてみました。また不安なども聞いてみました。
その結果、外仕事をしていて、直接的に太陽を浴びる人は、オフィスで仕事をしていて、窓から入ってくる光を間接的に浴びる人に比べて不安が少なく、抑うつになりにくいこともわかりました。
一日中、部屋の中で仕事や家事をしている人は、お昼休みには外でお弁当を食べたり、休憩時間に外の空気を吸いに外へ出るようにすると、うつになりにくくなるかもしれませんね。
内藤 誼人
心理学者