仕事や子育てを卒業したら、「人付き合い」もだんだんと減っていきますが、悪いことばかりではありません。「気の合う人とだけ付き合えることは、日々のストレスを大いに減少させる」と、心理学者の内藤誼人氏は言います。内藤氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、歳をとってからの人付き合いのコツを詳しく見ていきましょう。
歳をとると、人付き合いのストレスはなくなる?
あまり知られていませんが、お年寄りのほうが若者よりも人生満足度は高い傾向があります。
「えっ!? 逆なのでは?」と思うかもしれませんが、お年寄りのほうが日々の生活に対して満足度が高いのです。
なぜなら、お年寄りは気の合う人としか付き合わないからです。若いうちは、職場や取引先など仕事関係や子育ての環境で、あまり好きではない人とも付き合わざるを得ないということも多く、そういう不満が満足度を下げる傾向があります。その点、お年寄りは、自分が嫌いな人とは付き合いません。イヤな人と付き合わなくとも、何の支障もないからです。定年を迎えたら、本当に好きな友人とだけ付き合っていればいいので、人付き合いのストレスも感じないですむのですね。
米国スタンフォード大学のヘレン・ファンは、地元の電話帳でランダムに電話をかけ、中央値によって若い人206名(平均30.1歳)と、年配者196名(平均62.0歳)にわけて、どれくらい気の合う人と付き合っているのかを比較してみたのですが、年配者のほうが気の合う人とだけ付き合うという傾向が明らかにされました。
「本当は会社の飲み会なんかに出たくないんだけど、しかたない……」
「あんな奴の顔なんて見たくないけど、後で何か問題が起きても困るし……」
「子どもたち同士は仲がよいけど、親同士は特に趣味も合わないし……」
若いうちは、人間関係の心配をしなくてはなりませんが、定年を迎えたお年寄りにはそういう心配はゼロ。付き合いたくない人とは付き合わずにすませられるということも、お年寄りのメリットだといえます。
私たちにとって、「人付き合い」はストレスの第一の原因であることが多いのですが、お年寄りになると、人付き合いでのストレスはなくなります。付き合いたくない人とは付き合わなくとも何ら問題がないからです。
定年を迎えることには、こういう素晴らしいメリットもあるのです。
若いうちは、人脈を広げるためにも、積極的にいろいろな人と付き合ってみるのもいいかもしれませんが、ある程度の年齢になったら、むしろ付き合う人間を「絞り込む」ことを考えましょう。嫌いな人とはなるべく付き合わないようにして、一緒にいて楽しい人とだけ付き合うようにしましょう。嫌いな人から誘われても、「最近、ちょっと体調が悪くて」とウソをついてごまかしておけば、年齢のこともあるので、相手も無理強じいはしてこないと思います。