年齢を重ねるにつれて、家族や介護ヘルパーからのサポートが必要になるのは致し方のないこと。しかし、「できる範囲でいいので、援助を受ける側より与える側になったほうがよい」と、心理学者の内藤誼人氏は言います。内藤氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、その理由を詳しく見ていきましょう。
「至れり尽くせり」の生活は実は危険!?…高齢になっても〈人の助けを借りない〉ことがもたらす“驚くべき効果”とは【心理学者が助言】
接する機会が増えれば、偏見も減る
かつての日本の世帯では、大家族が主流でした。祖父母・夫婦・子や孫の3世代が一緒に生活していたのです。身近な環境にお年寄りがいましたから、お年寄りに対しても偏見などはありませんでした。ところが今は違います。
核家族が増え、子どもたちはお年寄りと接点がなくなってしまいました。こうしてお年寄りとの触れ合いが減った結果、今の人たちは何となく「お年寄りは汚いもの」「できれば避けたいもの」といった偏見を持つようになってしまったのです。
なので、お年寄りへの偏見をなくしたいのなら、できるだけ若いうちからお年寄りと接したほうがよいと思います。触れ合う機会が増えれば増えるほど、おかしな偏見など抱かなくなります。
オランダ学際人口研究所(NIDI)のケニー・ヘンケンスは、3,433社で調査を行い、業務で年配の人と頻繁に接する人ほど、お年寄りに対しての偏見が小さくなるという結果を得ています。頻繁にお年寄りと接している人は、「お年寄りはテクノロジーに弱い」「お年寄りは生産性が低い」といった偏見を持たなくなるのです。
外国人や障碍者、異性などに対する偏見も同様です。偏見をなくすには、相手に対して自分からどんどん話しかけることです。接触が増えるほど、偏見も減ります。
米国シアトル・パシフィック大学のマーガレット・ブラウンは、サービス・プロジェクトの一環として、大学生たちをホームレス支援シェルター、介護施設、ホスピス施設などに送り込み、9週間アルバイトをしてきてもらいました。するとどうでしょう、偏見を持たれやすい人たちと実際に触れ合う機会が増えた学生たちは、9週間後にはおかしな偏見を持たなくなったのです。
偏見をすぐに改めるのは難しいのですが、自分が偏見を抱いている人に自分からどんどん触れ合いを求めるようにすると、少しずつ偏見をなくすことができるでしょう。