うつ病と間違えられやすい「男性更年期障害」

高齢者の抑うつ、特に前期高齢者の抑うつの原因として、もう一つ、かなり多く見られるのが男性ホルモンの低下です。

男性にも更年期障害があることが知られるようになったきっかけは、漫画家のはらたいらさんが、この病気になったことを告白し、啓蒙のために自分の体験記を何冊も書かれたことです。しかし、まだまだ一般の人に広く知られるレベルまでにはなっていないようです。

ただ、医学の世界では、この病気への取り組みは進んでおり、治療を受けられる医療機関も増えています。現在では、正式病名を「加齢男性性腺機能低下症候群(late-onsethypogonadism症候群=LOH症候群)」と呼び、保険での治療も可能になっています。

アメリカでの調査では、60代の20%、70代の30%、80代の50%がこの病気にあたるレベルの男性ホルモンの低下が認められるとされています。症状が出るレベルということであれば、50歳以上の8%が該当するといわれています。

日本の場合、食生活や性生活を考えると、アメリカよりずっと多いのではないかと私は考えています(日本には正確な統計がありません)。この病気は、はらたいらさんが経験したような、さまざまな身体のだるさや、自律神経症状(集中力の低下、イライラ、ほてり、発汗、めまい、疲労感など女性の更年期障害の症状に似たものです)の他、不眠、抑うつもよく起こるので、うつ病と間違えられやすいのです。