「幸せホルモン」としても有名なセロトニン。セロトニンが増えることで、うつ病の予防や、不安の軽減、イライラ防止などの効果がありますが、日常生活のなかで、セロトニンを減らしてしまう状況がある、と精神科医である和田秀樹氏は言います。和田氏の著書『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』(KADOKAWA)より、詳しく見ていきましょう。
うつ病予防、イライラ防止にも有効な幸せホルモン〈セロトニン〉を消失させてしまう、あまりに身近な「2つのもの」【医師・和田秀樹氏が警告】
セロトニンを枯渇させる…極力避けるべき「2つのもの」
⑦一人酒や寝酒は避ける
アルコールはセロトニンを枯渇させる作用があるとされています。お酒を飲むことによって、ストレス解消になったり、仲間と飲んで感情がわき立ったり、よく眠れたりするというのであれば、アルコールによるセロトニンの減少を上回るセロトニンの増加が生じることもあります。そうでない場合は、飲酒によって、セロトニンを減らしてしまうことになります。
一人酒や眠れないからといっての深酒は、うつになるリスクを高めてしまいます。できるだけ避けたほうがいいでしょう。
⑧ストレスをためない
もう一つ、セロトニンの分泌に悪影響があると考えられているのがストレスです。
「ストレス」という言葉ですが、我々が専門家として使う用語と、一般にいわれるストレスにはちょっと違いがあります。
例えば、上司がパワハラまがいのことをしてくるという場合、「上司がストレスだ」というような言い方が一般的にはなされます。この場合、専門用語では、上司は「ストレッサー(ストレスを与えるもの)」ということになります。そしてストレッサーに対する相手の人の反応を「ストレス」というのです。だから同じように嫌な上司でも、ストレスを感じる人と感じない人がいるわけです。ということでストレスを減らしたり、なくしたりするには3つの方法があります。
2.ストレッサーに対するものの見方や受け止め方を変える
3.ストレスがたまってきたら解消する
例えば、上司や近所のうるさい人がストレッサーになっている場合。1の「ストレッサーから逃げる」とは、「会社を辞める」「異動させてもらう」、近所の人が嫌なら「転居する」という対応をすることです。それでストレスがなくなるなら、決して悪いことをしているわけではありません。ただ、現実にはそうはうまくいかないことも事実です。
昔と比べて転職がしやすくなったとはいえ、いまの会社より条件のいい会社がなかなか見つからないという現実もあります。長く勤めている人ならば、なおさらそうでしょう。
高齢者の場合は、会社で嫌な思いをすることは少なくなりますが、近所に住んでいる人が気の合わない人だったり、嫌な人だったりすることは珍しくありません。会社で働いていた頃は、そんなに顔を合わせたり話したりすることがなかったものが、そうでなくなると自然と会う機会も増えます。相手が嫌な人だった際のストレスがそのために大きくなることは結構ある話です。ところが、そのために転居するというのも高齢になるほど難しいでしょう。
その際に大切なのが、2の「ストレッサーに対するものの見方や受け止め方を変える」ことです。「嫌な人でもいい点もあるはずだ」とか、「悪気はなさそうだ」とか、「どうせ会うのは1日30分程度で残りの時間は会わないで済む」といったように見方を変えると、以前ほどはストレスを感じなくなることでしょう。
和田 秀樹
精神科医
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表