食事以外の「うつ病予防法」

③午前中に太陽の光を浴びる

セロトニンを増やす上で、もう一つ大切なのが、光、特に太陽の光です。

食べ物の摂取では、前述のように血中のセロトニン濃度が上がるだけで、脳内のセロトニンが直接増えるわけではありません。しかしながら、網膜に日光のような強い光が当たると、脳内のセロトニン神経が活性化され、それによって脳内でセロトニンが分泌されます。日光を浴びる時間が十分でないと、セロトニン不足が起こりやすくなるのです。

ある程度以上、トリプトファンを摂っている人であれば、日光を浴びるのは最も効果的な脳内のセロトニン増加法、つまりうつ病の予防法といえるのです。脳内にセロトニンが十分にあると、不安を感じにくくなります。イライラするといった感情も落ち着くことでしょう。さらにセロトニンは、夜になると脳内でメラトニンという睡眠物質に変わるため、セロトニンが十分にあると、睡眠の状態も良くなるのです。

日光を浴びるのは、頭をスッキリさせるためにも、夜に眠りやすくするためにも、午前中が効果的です。なぜなら、セロトニンが脳内で増えてくると、スッキリと覚醒できますし、夜になるとメラトニンが増えてきて、自然に眠ることができるからです。

④運動はのんびり歩く散歩で十分

適度な運動も、セロトニンを増やすことに役立ちます。特に、リズミカルな運動が、セロトニンの分泌を促すとされています。ウォーキングやジョギングなどが望ましいということになっていますが、私としては、ひたすら歩くウォーキングよりものんびり歩く「散歩」で十分だと考えています。これも比較的歩くリズムが一定になりやすく、セロトニンの分泌を促す効果があります。

街の景色や変化を楽しみながら歩く散歩は、視覚刺激がセロトニンの分泌を高めてくれる上に、脳の前頭葉に刺激も与えてくれます。そして何より、無理なく続けられるのがメリットです。まずは3,000歩ぐらいを目指して、楽しみながら歩かれたらいいと思います。

⑤映画や読書で感情を動かす

セロトニン神経の活性化には、感情を大きく動かすこともいいとされています。ただし、あまりに落ち込むのは逆効果です。

日常で感情が揺さぶられるような行為をするというのは難しいかもしれませんが、話のネタが豊富な人との会話を楽しんだり、ドラマチックな映画を観たり、展開が激しいストーリーの本を読むというのは、セロトニン分泌に有効です。

テレビは万人受けのものを作りがちで、あまり感情を揺すぶってくれないことが多いので、DVDを借りてきて映画を観たり、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどで評判のいい作品を選んで観るのがおすすめです。

⑥十分な睡眠で脳の疲れを取る

セロトニン分泌に大きな影響を与えるとされるのが、睡眠です。十分な睡眠が取れて脳の疲労が解消されれば、セロトニン神経は活性化するとされています。逆に、睡眠不足はセロトニンの枯渇につながるとされています。先に触れた通り、午前中に日光を浴びると、夕方以降にメラトニンの分泌が盛んになり、眠りやすくなります。

メラトニンは、セロトニンと同様に、年齢とともにその量が減っていきます。そのため、高齢になると、どうしても睡眠時間は短くなりがちです。ですから、歳を取るほど、午前中に日の光を浴びて眠りにつきやすいリズムを作ることが、なおさら大事になってくるのです。