一家の大黒柱である配偶者に先立たれることで、生活の基盤が揺らいでしまうケースは少なくありません。これは年金生活を送る高齢者にとっても、非常に大きな問題といえますが、生活苦に直面したとき、身を助ける制度があることを知っておくことはとても大切です。FP事務所「T&Rコンサルティング」の代表であり、CFP®保持者の新美昌也氏が、事例を交えて解説します。
えっ、遺族年金がもらえない!?…夫に先立たれ、〈年金月6万円〉生活を余儀なくされた65歳妻。窮地を救った「緑色の封筒」に思わず嬉し涙【CFPの助言】
夫に先立たれても「遺族年金」がもらえないワケとは
夫婦でパン屋を営んでいた、栗原久恵さん(仮名・65歳)。子どもはいなかったものの、同い年の夫とはとても仲が良く、「おしどり夫婦」と近所でも評判でした。町で25歳のときから開業したパン屋は、地元で愛される人気店でしたが、56歳のとき、夫が脳梗塞で倒れ、意識不明の重体になり、栗原さんの懸命の看病もむなしく、その後亡くなりました。
栗原さんは、夫との思い出が詰まった店を一人で切り盛りし、頑張っていました。しかし、60歳を越えたころから、体も徐々に弱りだしてきて昔と同じようには働けなくなりました。腰を痛めて動けなくなり、パン屋も後継者がいないので、やむなく休業することにしました。
腰の具合もよくなってきたころ、店を再開しましたが、近所には人気チェーン店のパン屋も新たにオープンし、最盛期よりは売り上げも落ちてしまい、ギリギリの経営状態です。
栗原さん夫妻はともに国民年金加入者です。しかし、「遺族基礎年金」を受給できるのは死亡したほうに生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」なので、栗原さんは受給できません。
さらに、亡くなった夫は生命保険に入っていませんでした。そのため、栗原さんは、60歳から65歳になるまで「寡婦年金」を受給していました。
現在、貯蓄を取り崩しながら生活しています。年金は月額約6万円です。いっそ店を畳もうか、とも考えてはみるものの、今後の生活への不安から決断できずにいました。
老後のお金の不安を抱える相談者のもとへ届いた、一通の封書
そんなある日、栗原さんのもとに日本年金機構から「緑色の封筒」が届きました。中に入っていた「老齢年金生活者支援給付金」の請求書を発見し、早速請求してみることにしました。大きな金額ではありませんが、生活の足しになるのはありがたいと、ここしばらく、先々のお金の不安に悩まされ、張り詰めた気持ちで過ごしていた栗原さんは、嬉しさで思わず涙がこぼれました。
久しぶりに前向きな気持ちになれた栗原さん。「老齢年金生活者支援給付金」の詳細をはじめ、年金制度のことをもっと詳しく知っておきたい、と知人に紹介してもらったファイナンシャルプランナーに相談することにしました。