一家の大黒柱である配偶者に先立たれることで、生活の基盤が揺らいでしまうケースは少なくありません。これは年金生活を送る高齢者にとっても、非常に大きな問題といえますが、生活苦に直面したとき、身を助ける制度があることを知っておくことはとても大切です。FP事務所「T&Rコンサルティング」の代表であり、CFP®保持者の新美昌也氏が、事例を交えて解説します。
えっ、遺族年金がもらえない!?…夫に先立たれ、〈年金月6万円〉生活を余儀なくされた65歳妻。窮地を救った「緑色の封筒」に思わず嬉し涙【CFPの助言】
所得が少ない年金生活者のための「老齢年金生活者支援給付金」
老齢年金生活者支援給付金は、2019(令和元)年10月に行われた消費税率10%への引上げに合わせて、所得が一定基準を下回る公的年金(老齢基礎年金・遺族基礎年金・障害基礎年金)の受給者へ支給が開始されました。
老齢年金生活者支援給付金は、以下の3つの要件すべてを満たした人が対象となります。請求しないと受給できないため、手続きが必要です。
2.前年の公的年金等の収入金額※1とその他所得(給与所得や利子など)の合計額が、878,900円※2以下であること。
3.同一世帯の全員が市町村民税非課税であること。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 毎年度改定されます。778,900円を超え878,900円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。給付額は、保険料納付済期間に基づく額に調整支給率を乗じて得た金額となります。
2024(令和6年)年度の給付金額は、国民年金の保険料納付済期間、保険料免除期間の月数に応じて、以下の1と2の合計額となります。
2.保険料免除期間に基づく額(月額)=11,333円※1×保険料免除期間÷480月
※1 昭和31年4月2日以後生まれの方は、保険料全額免除、4分の3免除、半額免除期間は11,333円、保険料4分の1免除期間は5,666円となります。
たとえば、納付済月数が240月、全額免除月数が60月の場合の給付額は、
2.保険料免除期間に基づく額(月額):11,333円×60月÷480月=1,417円
3.合計(1+2): 2,655円+1,417円=4,072円(月額)となります。
栗原さんの場合、国民年金に35年(420月)間加入しているため、老齢基礎年金は、
月額59,500円(68,000円×420月÷480月)
となります。
給付金の月額は、上記の計算式に当てはめると4,646円になりますので、老齢基礎年金と合わせて64,146円となります。
自営業者は若い時から計画的に老後資金を準備することが大切
自営業者は会社員に比べると、社会保障制度が手厚くありません。とくに、子どもがいない場合、自営業者は遺族年金を受給できません。遺族の生活保障のために収入保障保険などの死亡保険に加入しましょう。
自営業者が年金を増やす方法としては、加入期間が40年に満たない場合は60歳以降でも「任意加入制度」が活用できます。月額400円の付加保険料を上乗せして支払えば、老齢基礎年金に、[200円×付加年金保険料納付済月額]が上乗せできます。年金を65歳で受け取らずに70歳で受け取るなど「繰下げ受給」で年金を増やす方法もあります。
また、詳細は省きますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)や国民年金基金、小規模企業共済など年金を税優遇を受けながら年金を上乗せできる制度があります。
栗原さんのように65歳からでは対策が限られますので、現役のうちからこれらの制度を検討し、活用することをお勧めします。
[参考資料]
厚生労働省:老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
日本年金機構:老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
日本年金機構:遺族基礎年金
日本年金機構:老齢基礎年金 令和6年4月分からの年金額
新美 昌也
T&Rコンサルティング代表
CFP