歳を重ねるにつれて、自らの老後だけでなく、自分が亡くなった後の家族が生活に困らないための対策も必要になってきます。最愛の夫を亡くしたAさん(66歳)は、遺族年金額の「あまりの少なさ」に絶望しましたが、亡き夫からの「最期のプレゼント」に思わず涙しました……。ファイナンシャルプランナーの石川亜希子氏が、事例をもとに解説します。
お父さん、ありがとう…年金月7万円の66歳女性「遺族年金額」に絶望も、亡き夫からの“プレゼント”に涙【FPが解説】
これからどうすれば…最愛の夫を亡くしたAさんの絶望
専業主婦のAさん(66歳)は、3歳年上の自営業の夫Bさんと二人暮らしです。夫婦仲はとてもよく、これまでも国内外を問わずいろいろな場所を旅してきました。
しかし、悲劇は突然訪れるものです。ある日、友人とお茶を楽しんだAさんが帰宅したところ、ダイニングで倒れている夫を発見。すぐに救急車を呼びましたが、Bさんは70歳を目前に亡くなってしまいました。
Aさんは、長年専業主婦として家族を支えていたため、支給される年金額は月に約7万円のみ。財産と呼べるものは、生前夫が贈与だといって毎年50万円ずつ振り込んでくれていた預金500万円と自宅、それに夫名義の預金口座にある300万円です。
「これからどうやって生きていけばいいの……」Aさんは不安で胸が締めつけられてしまいました。
「遺族年金」は、誰でももらえるわけではない
「遺族年金」は、被保険者が亡くなったときに、その配偶者や子どもなど、被保険者によって生計を維持されていた遺族に支給されるものです。老齢年金と同じように“2階建て”の仕組みになっており、1階部分が「遺族基礎年金」、2階部分が「遺族厚生年金」となっています。
1階部分の「遺族基礎年金」は、被保険者に生計を維持されていた「子のある配偶者」や「子」に対して支払われます。ただし「子」については、18歳の誕生日以後最初に迎える3月31日までの年齢でないと支給の対象にはなりません。
Aさんには息子が2人いますが、それぞれすでに成人して家庭を持っているため、残念ながらAさんには遺族基礎年金の受給資格がありませんでした。
一方、2階部分の「遺族厚生年金」は、会社員や公務員など厚生年金に加入している被保険者が死亡した場合に支給されます。なお、受給額は死亡した方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。
Bさんは会社勤めの期間もありましたが、途中から自営業として独立したため老齢厚生年金額は少なく、その4分の3となると月にわずか1万5,000円ほどとなります。
さらに、「65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受給する権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルールがあります。そのため、66歳のAさんは、最終的に差額の約1万円ほどしか受け取れません。
遺族年金とは名ばかりで、生活の足しにするにはあまりにも少ない金額に愕然。途方に暮れたAさんは、藁にもすがる思いで長男に電話をかけました。「お母さん、もう生きていけないかもしれない……」
すると長男から、意外な返答が。
「大丈夫。父さんは『俺がいなくなっても母さんが安心して暮らせるように』って、いろいろ対策していたみたいだから」