「自分の親の年金を頼りに生きる子供」が社会問題となっています。特に老人ホームに入所している場合、年金は介護費用として重要な収入源です。しかし、その年金を子供が使い込んでしまうケースもあるようで……。今回は、老人ホームで暮らす82歳の母親が、息子の経済的搾取によって追い詰められた事例から、この問題の背景と対策についてFPの三原由紀氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
年金月15万円・82歳母「我が子に迷惑をかけたくない」と老人ホーム入居を決断。もう安心と胸を撫で下ろしたが…月収10万円・52歳息子の「まさかの裏切り」に絶望【FPの助言】
年金暮らしの82歳母、介護付き老人ホームへの入居を決断
東京都在住の佐藤和子さん(仮名・82歳)は、夫を亡くしたあと、都営住宅で長男の佐藤隆さん(52歳)と二人暮らしをしていました。隆さんは独身で非正規雇用。大学卒業後、一時は大手企業に勤めていましたが、30代半ばで会社のリストラに遭い、その後は派遣社員やアルバイトを転々としてきました。
コロナ禍で雇用状況が悪化し、現在は週3日ほど倉庫作業のアルバイトをしていますが、月収は10万円程度。生活費の大部分は和子さんの年金(月約15万円の遺族年金と少額の基礎年金)に頼る状態が続いていました。
3年前、和子さんは脳梗塞で倒れ、一時入院。その後、歩行が困難になり、自宅での生活に支障が出始めました。隆さんは仕事と介護の両立に苦労し、不規則な勤務のため、和子さんが一人で過ごす時間も長くなっていました。和子さんは「息子に迷惑をかけたくない」という思いから、自ら介護付き老人ホームへの入居を決断しました。
幸い、長女の美香さん(55歳)は結婚して経済的に安定しており、身元引受人を引き受けてくれました。ただ、美香さんは兵庫県に住んでおり、日常的な対応は近くに住む隆さんが行うことになりました。
施設費用は月額約20万円。和子さんの年金だけでは足りないため、700万円ほどあった貯金から毎月5万円ほどを取り崩して補填する計画を立てました。このままいけば、十数年は安定して施設に入れるはずでした。