答えがでなくても自分を許す

本稿では、定年の準備に向けた健康というテーマについて述べました。

健康寿命と平均寿命の差の期間を健康に過ごすためには、定年直前から運動習慣をつけ、睡眠や休暇の取得を通じた休息を取ることが大切です。しかし、近年は変化の激しい社会を生き抜くために、高い生産性が求められるようになり、体を休めるだけでは、精神的な休息を得ることが難しい時代になってきていると感じます。

2017年、精神科医の帚木蓬生※5氏が、書籍『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)を通じて「ネガティブ・ケイパビリティ」を紹介し、日本でも「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念が知られるようになりました。

「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力、性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいることができる能力」※6とされています。

特に、定年前になると、今後のキャリアへの迷いなどさまざまな気持ちが出てくる瞬間もあります。そのようなときに、「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を踏まえ、あえて答えのないなかに身を置くことに慣れることの大切さを知っておくだけでも、気持ちが軽くなる部分があるのではないでしょうか。

参考
※1:厚生労働省「平均寿命と健康寿命」
※2:厚生労働省「座位行動」
※3:厚生労働省「身体活動・運動」
※4:OECD “Gender data portal2021”
※5 帚木蓬生(2017)『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書) 
※6:帚木蓬生(2017)『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書) 

小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト