介護離職の予防に向けた準備

経済産業省※1によれば、高齢化の進行に伴い、日本全体でビジネスケアラー(仕事をしながら家族の介護に従事する者)の数が増加することが予想されています。

介護離職者は毎年約10万人であり、2030年には、ケアラーのうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになる見込みであるとされています。特に、40代や50代になると、管理職等責任の重い仕事につき、日々忙しい毎日を送っているときに、親の介護問題に突然直面する方は少なくありません。

総務省※2によれば、東京圏の転入超過数(年齢5歳階級別)は20~24歳が最も多く(7万3,166人)、次いで15~19歳(2万186人)、25~29歳(1万9,417人)と、若い世代が多くなっています(0~4歳および55~79歳6区分は転出超過となっている)。

しかし、注目すべきは80歳以上の高齢者の転入超過数であり、2010年以降は連続で転入超過状態であることです。一見、移動が困難にみえる高齢者の転入が増えている背景には、東京圏に住む中高年の子世代が地方部に住む高齢な親を呼び寄せていると想像します。

親の介護にかかるお金の問題

生命保険文化センター※3によれば、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1ヵ月(5年1ヵ月)、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、月々平均8万3,000円というデータもあります。

仮に、親に貯蓄などがなく、すべてを負担した場合、約500万円近くの金額を子が負担する必要ということになります。

日本総合研究所の調査※4によれば、東京圏に勤める高学歴中高年男性の年収について、1,000万円以上と回答している男性は約3割にのぼり、「600万~800万円未満」(22.1%)、「800万~1,000万円未満」(18.0%)と続く数値をふまえると、約7割が600万円以上の収入を稼いでいます。

しかし、大企業等に勤める高収入な方であっても、親の長生きのリスク、さらには自身の長生きのリスクまでも背負う必要を考えれば、介護離職を避けるための準備が必要だと考えます。

最近では、仕事と介護の両立をしやすい環境づくりに取り組んでいる職場も増えていますが、親等の介護によって離職をしてしまうことになれば、想定していた年金や退職金も目減りしてしまいます。親を近くに呼び寄せれば、仕事は辞める必要がなくなるかもしれませんが、月々8万円の負担が増えるかもしれません。

少しでも経済的負担を減らそうと自宅で仕事をつづけながら介護を行った結果、妻に介護の負担が偏り、「介護離婚」を切り出されるなど、家庭の問題が起こるリスクもあります。