収入要件に引っかかり、万が一のときに「遺族年金」をもらえない人は?
残された家族の生活を支えてくれる「遺族年金」。被保険者が亡くなった当時、被保険者によってによって生計を維持されていた遺族に対して受給権が発生しますが、この「生計を維持されていた遺族」とは、「死亡した被保険者と生計を同じくし」「恒常的な収入が年収850万円未満(または所得655.5万円未満)」という、2つの要件を満たす遺族のことをいいます。
実際に、どれほどの人が対象となり、どれほどの人が対象外となるのでしょうか。「夫を亡くした正社員の妻」を例に考えてみます。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、女性の正社員(平均年齢40.9歳)の平均給与は、月収28.18万円、賞与も含めた年収は440.81万円。さらに月収の分布をみていくと、賞与は平均月収の2.8倍を手にしています。中央値は19.26万円、上位10%で27.04万円です。
賞与は平均月収の2.80倍もらっているので、そのまま当てはめると、月収57.4万円を下回れば遺族年金の収入要件はクリアするといえます。女性の正社員の場合、収入要件を上回るのはたった0.14~0.20%。また給与水準の高い大卒に限っても0.59~0.85%という水準です。
10万円未満…0.24%
10万~20万円未満…56.50%
20万~30万円未満…37.92%
30万~40万円未満…4.48%
40万~50万円未満…0.52%
50万~60万円未満…0.19%
60万円以上…0.14%
女性の労働者は2,700万人強で、そのうち正社員は50%弱。そこから考えると、収入要件を満たさず、遺族年金をもらえない可能性のある正社員妻は全国に数万人程度ということになります。
ちなみに正社員の男性についてみていくと、年収850万円以上となるのは1.18~1.95%ほど。そもそも夫は遺族基礎年金の対象外で、受給できるのは遺族厚生年金のみという違いはありますが、収入の視点でみると、遺族年金は多くの人を対象にした制度であるといえるでしょう。