高齢者の運転事故…じつは“クスリ”が原因だった!?

ちなみに、私は高齢者の運転事故の多くはクスリによる意識障害ではないかと思っています。

年をとると動脈硬化を起こして血管の壁が厚くなります。長年にわたって高齢者医療に携わってきましたが、実際にお年寄りを診てわかったことの1つは、動脈硬化を起こしていない高齢者は1人もいないということです。

だからといって、すべての高齢者が動脈硬化から心筋梗塞を発症するわけではありません。ただ、血管の壁が厚くなっていると、低血糖や低血圧を起こしたときに意識障害を起こしやすいのです。

高齢者から運転免許を取り上げる根拠の1つに、高齢者の重大事故がありますが、クスリを使って過剰に数値を下げていることが原因である可能性も否定できません。

私が弁護士だったら、因果関係を証明して、クスリを処方した医者に損害賠償を求めるでしょう。これもまた私が高齢者の免許返納に反対する理由の1つです。

いずれにしても、医者から言われる目標数値よりも、自分の体の声を聞くことのほうが大事だということです。体の声を聞くためにも、鏡で自分の顔を見ることが大事です。

「顔色が悪い」は的を射ている

昔は、「顔色が悪い」という言い方がありました。体調の悪化は顔に表れるのです。ところが、数値偏重の医療が一般の人たちにも浸透してしまった結果なのか、最近はあまり言われなくなりました。

前述のように人の体には個性がありますし、ライフスタイルも異なります。食べたいものを食べることをやめない、クスリはなるべく飲まないという生き方をしたほうが調子がよいのであれば、その選択をするのはその人の自由です。

そのときの体の声、自分の体からのメッセージに「見た目」があります。鏡を見るのもその1つですが、自分の体を客観的に見ることは、ファッションだけでなく、健康にとっても大事なことなのです。

和田 秀樹
医師