「話し方」は人の印象を左右します。いざというときに人を惹きつけるには、事前の準備が大事。『60代からの見た目の壁』(株式会社エクスナレッジ)の著者で医師の和田秀樹氏が解説します。
「スピーチが上手な人」は見た目も若い!?東大医学部卒の医師が語る〈話術〉の重要性
人前で話すときはリハーサルを
見た目の若さは、顔にシワがあるとかないとか、髪が黒いとか白いとかだけで成立するものではありません。
知的な会話ができるかどうかというのも見た目に反映されます。また会話に関しては、言葉づかいなども重要です。
人前で魅力的に話すためには、話し方の練習も必要ではないかと私は思っています。コロナの前は、テレビで有名人のお葬式を放送していたりしました。そこでやはり有名人が弔辞を読むのですが、それが感動を呼ぶのは、みんな何度もリハーサルをしているからでしょう。
個性的な弔辞は、原稿も自分で書いていると思います。漫画家の赤塚不二夫の葬儀で弔辞を読んだタモリさんの「僕もあなたの作品の1つです」というフレーズは、赤塚の自宅で居候しつつ、ギャグのネタを磨いたタモリさんでなくては書けないと思います。
ところが、人前で演説するのが商売の政治家のほとんどが、リハーサルしていないというのは、どういうことなのでしょうか。
21年8月6日、広島の平和記念式典で、菅義偉首相(当時)が、あいさつの一部を読み飛ばしたことで批判されました。
後日、菅首相は読み飛ばしたのは「原稿の一部がのりで貼り付いていた」からだと釈明しました。複数枚の紙に書かれた原稿がのりでバラバラにならないようにまとめられていたのですが、のりが強くついていて、めくれないページがあったため、読み飛ばしてしまったのでしょう。
そもそも書かれている内容を理解しながら読んでいれば、読み飛ばしたかもしれないとわかるから、すぐ戻ることができるはずです。何も考えないで棒読みしているから、こんなことが起こるのだと思います。
今や政治家の演説はスピーチライターが書いた原稿の棒読みがあたりまえになっていますが、これでは聞いている人の心に刺さるわけがありません。どうしてあらかじめリハーサルをしておかないのだろうと、いつも不思議に思います。
1回でもリハーサルをしておけば、漢字の読み間違いというのもまず起こりません。リハーサルで読めなかった漢字を、辞書(今ならスマホでもできます)で調べてふりがなを振っておけばよいだけです。自分で書いた原稿ではないのですから、リハーサルしないで、上手に読めるはずがありません。