日本酒の「ペアリング」のコツとは?

ペアリングを実践するためには、まずは下記の日本酒の4タイプをテイスティングして、特徴を実感できるようになることが大切です。

①フルーティタイプ(大吟醸酒・吟醸酒系・生酒)
(「東洋美人」「横山五十」「山丹正宗」など)

香りは華やか。リンゴ、イチゴ、メロンなどフレッシュな果実やバラ、キンモクセイ、ユリなどの花のような印象。味は甘くジューシーで、透明感があり果実感にあふれています。余韻は程よく長く、冷やして飲むと味わいの輪郭をくっきりと感じられます。
 

②軽快タイプ(本醸造酒・火入れ酒全般・生酒)
(「八海山」「久保田」「播州一献」など)

香りは穏やか。レモン、スダチ、グレープフルーツなどの柑橘系、ローズマリーやイタリアンパセリなどのハーブ系、竹や杉のような樹木系の香りをうっすらと感じられます。味わいは軽やかですっきり、キレも良い。余韻は短く、よく冷やして飲むと爽やかさが強調されます。
 

③旨口タイプ(純米酒・生酛・山廃酛)
(「龍力」「石鎚」「田酒」など)

香りは、米に由来する落ち着いたイメージで、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を思わせるような印象です。和三盆や水飴のような糖系や昆布のだし系の香りも。味は、米の旨味が凝縮されたふくよかさを感じさせます。余韻はやや長く、常温から熱燗まで幅広い温度帯を楽しめます。
 

④熟成タイプ(熟成期間をとった日本酒)
(「達磨正宗」「木戸泉」「神亀」など)

香りは、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ系。ドライのレーズンやアンズ、紹興酒やシェリー酒のような酒系、カラメルソースやメープルシロップなどの糖系の香りも感じられます。味は、甘味と旨味が幾重にも重なった熟成した奥深さが特徴です。円熟味のある存在感。余韻は長く、冷たく冷やしたり燗をつけたりと、様々な温度帯で熟成酒ならではの個性を発揮します。

多彩な香りと味の濃淡などで分類されている4タイプを、自分の舌や鼻でカテゴライズできるようになると、ペアリングするときの食材、調味料、料理法などを選ぶスキルが鍛えられます。

では、日本酒4タイプ別のペアリング例を挙げてみましょう。

■フルーティタイプ(大吟醸酒・吟醸酒系・生酒など)

パプリカやマンゴーなどの素材そのものの甘味を最大限に活かせるのがこのタイプ。香りにメロンやバナナなどを感じたら、その香りと同じフルーツをアクセントに使用してみましょう。味付けは濃過ぎると、せっかくのフルーティな魅力を感じられなくなるので、薄めで調整します。

〈メニュー例〉

稚鮎(稚鮎はメロンのような香り)の天ぷら、パプリカ、フルーツトマトのマリネ、モッツァレラチーズと柿のカプレーゼ、キスのカルパッチョ(オレンジを煮詰めたソースがけ)、生ハムメロン、パパイヤのはちみつレモンがけ、イチゴとクレソンのバルサミコ酢サラダ、キウイの豚肉巻き

■軽快タイプ(本醸造酒・火入れ酒全般生酒など)

素材そのものの旨味を感じられるエビや白身魚の刺身、ハーブ、パセリなどのインパクトが強過ぎない香草、繊細な昆布だしとの相性が良いです。味付けは薄めで、焼く、蒸すなどシンプルな料理法がおすすめです。

〈メニュー例〉

ジュンサイの酢の物、タコときゅうりの酢漬け、湯葉の刺身、イカそうめん、もやしのナムル、おからの野菜炒め、キノコ類のマリネ、ささみのポン酢和え

■旨口タイプ(純米酒・生酛・山廃酛の酒など)

旨味がたっぷり乗っているサバやマグロ、牛や豚のばら肉など味の主張がしっかりあるタイプとよく合います。味付けは甘辛煮やみそ焼きなど濃いめのものと調和します。

〈メニュー例〉

あん肝の生姜煮、うなぎのかば焼き、肉じゃが、イカ墨パスタ、白菜と豚ばら肉のミルフィーユ鍋、牡蠣フライ、鶏もも肉の竜田揚げ、シュウマイ

■熟成タイプ(熟成期間を長くとった酒など)

万華鏡のような香りのバリエーションを楽しむことができる熟成酒は、独特な癖のある食材や調味料と見事にマッチします。ラム肉燻製、ドライフルーツ、トリュフ、ナッツ類、ブルーチーズ、スパイス系などと楽しめます。インド料理や中華料理などの力強さにも負けず、濃厚な味付けが向いています。

〈メニュー例〉

スパイスカレー、麻婆豆腐、豚ロースのナンプラーにんにく焼き、タンドリーチキン、キノコのオイスターソース煮詰め、ブルーチーズと焦がしキャラメルアーモンドのクラッカーのせ

あくまで基本ルールに則ったペアリング案です。家であなたのお好きなタイプの日本酒と向き合って、あれこれと合う料理を作って楽しんでみてはいかがでしょうか。