日本酒には味や香りで4タイプに分けられ、それにより相性のよい料理も異なります。さらに、ペアリングを究めるには、日本酒の「温度帯」を意識することが大切、と日本酒の専門家である近藤淳子氏は言います。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、日本酒のペアリングについて、詳しく見ていきましょう。

日本酒がもっと美味しくなる!〈完璧なペアリング〉を実現するために知っておきたい「温度の法則」とは【専門家が解説】
日本酒の保管は「温度管理」が命
日本酒に含まれる有機酸には、「冷旨酸(れいしさん)」と「温旨酸(おんしさん)」があります。
「冷旨酸」とは、冷やしておいしいと感じる「リンゴ酸、クエン酸、酢酸」(フルーティタイプ・軽快タイプ)のこと。精米歩合の数値が小さい吟醸タイプや本醸造酒など、華やかな香りとみずみずしくフレッシュな酒質は冷やすことで一層、その個性が強調されます。
例えば、冷やすと「味の輪郭がシャープになる」「爽やかさが強調される」「飲み口が軽快になる」などの傾向に変化。真夏に甘いお酒を常温で飲むと、人によっては重たく感じてしまうこともありますが、冷やすと、その甘さを緩和して飲みやすくできます。軽快タイプはその軽やかな個性がより際立ち、キレが良くなることもあります。
これらのタイプは、3℃~8℃(冷蔵庫の種類による)の家庭用の冷蔵室や野菜室で冷やしておくことをおすすめします。
日本酒をよりおいしく飲むためには、日本酒の温度管理をしながら保管することがとても大切です。なぜなら、日本酒は温度に敏感に影響を受けてしまうからです。最近では、ワインセラーならぬ、温度帯別で冷蔵できる高性能な日本酒セラーも開発されています。
「温旨酸」とは、温めるとおいしいと感じる「乳酸、コハク酸」(旨口タイプ・熟成タイプ)のこと。昔ながらの生酛や山廃、旨味にあふれた純米酒、熟成酒などは、温めることで旨味がより花開きます。温めると「香りが立つ」「味わいにふくらみと丸味が増す」「旨味が増える」などの味覚変化が起きます。
これらの種類は、グルタミン酸などの旨味成分が多く含まれているため、旨味をさらに感じやすくなるのです。酸味が多く、やや重たいと感じる酒質は、温めるとまろやかになり、味わいのバランスが整うこともあります。熟成酒はあまり高温に温めすぎると苦味が出る場合もありますので、注意が必要です。
火入れをしていないため酵母が生きている「生酒」や、お値段の張るあまりお燗のイメージがないような「大吟醸」も温めてみると、その新たな魅力が引き立つこともあります。実際に自身がおいしいと思う温度帯をあれこれ探してみると楽しいのではないでしょうか。