健康管理に気を付けていても、がんになるときは突然やってきます。医療保険には加入している、という人も多いでしょうが、加入内容はしっかり把握していますか? なかには、いざというときに役に立たないというケースも……。本記事では、Sさんの事例とともに医療保険の注意点について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
「すい臓がんです」年金月13万円・貯蓄1,000万円の60代母、〈医療保険〉があるから安心かと思いきや…まさかの“給付金0円”の悲劇「なにかの間違いでは?」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

健康で過ごせるよう、体調管理には注意を払っていたが…

Sさんは、67歳。地方の街で一人暮らしをしています。現在のひと月の収入は、夫の遺族厚生年金*とSさんの老齢基礎年金を合わせて13万円、パート勤務による給与5万円、夫の両親から相続した土地を駐車場として貸し出しているので、そこから5万円を受け取っています。Sさんの楽しみは、仲良しの友人と食事に出かけたり、温泉旅行に行くことです。

 

* 日本年金機構
平均報酬月額 40万円×7.125/1,000×平成15年3月までの加入期間の月数324ヵ月=92万3,400円
平均標準報酬額 65万円×5.481/1,000×平成15年4月以降の加入期間の月数36ヵ月=128万255円
夫の遺族厚生年金:(①+②)×3/4÷12ヵ月=6万5,728円 として計算。

 

3歳年上の夫はSさんが50歳のときに亡くなりました。Sさんには長男(35歳)と長女(33歳)の2人の子どもがいます。当時、Sさん夫婦の子どもは、長男は高校生2年生、長女は中学3年生でした。夫を亡くした悲しみのなかでしたが、子ども達を立派な社会人に育てようと、頑張ってこられました。

 

幸いSさんの夫の残した財産は、子ども達が大学に進学するには十分でした。生活費についても贅沢はできませんでしたが、困窮することはなかったので有難かった、と振り返ります。子ども達は無事社会人となり、2人とも実家を出ましたが、車で30分くらいのところに住んでいます。長女は昨年結婚し、長男夫婦にはもうすぐ2人目の子どもが生まれます。

 

Sさんの現在の貯蓄額は1,000万円です。「決して十分といえる金額ではありません」とSさんは言います。将来、施設入所で必要になることがあるかもしれません。しかし、現在は貯蓄を取り崩すことはなく生活できていますし、使う必要がなければ子ども達に残してあげたいと考えていました。

 

Sさんは、食事の内容や睡眠時間、適度な運動などと健康管理は十分行っています。子ども達や子どもたちの家族に心配をかけることがあってはいけないと願っているからです。そのため、毎年人間ドックを受診していました。