心身に障害のある児童・生徒が通う「特別支援学校」。幼稚部・小学部・中学部・高等部がありますが、どのような教育が行われているのでしょうか。昨今、世界で注目されている「インクルーシブ教育」とともに解説していきます。

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「特別支援学校」とは?

「特別支援学校」とは、障害のある子どもや特別なニーズを持つ子どもに、教育的な支援を提供することを目的とした学校です。対象となる障害は5つで、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)です。

 

特別支援学校では、教師や専門家チームが、一人ひとりのニーズに応じた指導方法を検討します。それによって、子どもたちは障害の種類やレベルに応じてカスタマイズされた授業を受けることができます。

 

特別支援学校のクラス編成は、特別な事情がない限り、同学年の生徒かつ障害の種別ごとになっています。人数は、小学校と中学校では6人以下、高等学校においては8人以下とされています。

 

特別支援学校に通いたくても、障害の種別によっては通学して教育を受けることが困難な子どももいます。そのような子に対しては、教師を家庭や児童福祉施設、医療機関などに派遣し教育をする「訪問教育」を実施しています。

 

なお、特別支援学校では、教育的なサポートだけでなく、社会的なスキルや自己肯定感の向上にも重点を置いています。集団活動やコミュニケーションのトレーニングなどを通じて、同級生との関わりを学び、社会で自立して生きるための準備をする場でもあるのです。特別支援学校での経験を通じて、将来的に一般の学校環境に順応するためのスキルや、社会で生きていく自信を身につけることも意味します。

 

また、子どもへの支援だけでなく、家族や地域社会と協力関係を築くことも特別支援学校の重要な役割です。家族への支援や情報提供、地域のイベントや活動への参加など、幅広い面で社会と連携を図りながら、子どもたちが支援された環境で成長できるよう配慮されています。

 

入学に際しては、就学相談を通し総合的に判断されます。地域の専門窓口に確認しながら、子どもにとってより良い環境を探していくことが大切です。

 

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世界が注目する「インクルーシブ教育」

「インクルーシブ教育」とは、障害を持つ子どもや学習困難を抱える子どもが、特別支援学級ではなく、一般のクラスで教育を受けることを目指すアプローチです。すべての子どもたちが平等に教育の機会を受け取り、その能力を最大限に発揮できる環境を提供することを目的としています。

 

近年、世界的に注目されているインクルーシブ教育ですが、その背景には、人権や社会的公正といった価値感があります。障害や学習困難を抱える子どもを特別視するのではなく、ほかの子どもと同様に社会の一員として活躍する機会を持つべきだという考え方が広がっているのです。

 

また、一般の子どもにとっても、多様なバックグラウンドを持つ友達と共に学ぶことで、相互理解や協調性が育まれ、社会に出たときに豊かな人間関係を築くための基盤がつくられると考えられています。互いの違いを理解し受け入れる心を育む教育をすることで、クラス内での支え合いが自然と生まれ、多様なニーズを持つ子どもたちが安心して学べる環境が築かれます。

 

クラス全体が互いに支え合い協力する文化を築くためには、教師の役割は非常に重要です。教師は子どもたちの個別のニーズを理解し、それぞれに応じた指導方法を工夫するだけでなく、子ども同士のコミュニケーションや共感を促す活動も取り入れる必要があります。

 

インクルーシブ教育の実現には、まだまだ多くの課題がありますが、学校、教師、子ども、保護者、そして地域社会が連携し共に努力することで、より良い教育環境が生まれるのではないでしょうか。

 

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本連載は、株式会社コペルが運営するホームページ内のコラム(https://copelplus.copel.co.jp/column/)を転載・再編集したものです。