感情を表現することの大切さ

歳を重ねると、感情的になることは少なくなります。しかし、どうしても気に入らないことがあるのなら、はっきりと相手に伝えるほうが、お互いにとっていいでしょう。

「私は、あなたの○○がどうしても苦手」ということをはっきり言わないと、相手には伝わりません。超能力者でもない相手には、こちらがどんな感情を抱いているのかがわからないのです。

もちろん、最初から喧嘩腰になるのではなく、穏やかな話し方で、「今後は○○してほしい」ときちんと伝えれば、相手にも理解してもらえるはずです。

家庭内で気に入らない点があれば、それも伝えましょう。

「私の体調が悪いときには、黙って家事を手伝ってほしい」

「新聞を取りに行くのなら、ついでにゴミ出しもしてほしい」

そういうことはどんどん指摘したほうがいいと思います。喧嘩腰で言うのでなければ、相手も「わかった」と納得してくれるはずです。ムカッとすることがあっても我慢していたら、ずっと気分の悪さがつづきますよね。当然、健康によいはずもありません。怒りはため込むのではなく、上手に発散すべきなのです。

米国ラッシュ大学のロバート・ウィルソンは、平均75.4歳の851名を、5年ほど追跡調査してみました。その5年間で164名が亡くなったのですが、亡くなった人には、「怒りを表現せず、怒りを心の中にため込みやすい」タイプという共通点があることがわかりました。

怒りを感じたら、表現しましょう。

兼好法師は『徒然草』の中で、「おぼしきこと言わぬは、腹ふくるるわざなり」と書いています。思ったことを口に出さないと、お腹の中に何かが残っているように感じて気持ち悪いという意味です。

何か思うことがあれば、どんどん相手に伝えたほうがよいでしょう。相手が親しい友人や配偶者であってもそうです。気になる点は、お互いに改善していかないと、将来的にも楽しくお付き合いができませんから。

もちろん、言い方には気をつけなければなりませんよ。不満や愚痴を感情的にぶつけるのではなく、できるだけ落ち着いた話し方で、「改善してもらえればどれだけ自分が嬉しいか」ということを理解してもらうようにするのです。穏やかに話せば、相手もきっとわかってくれます。遠慮なく、自分の考えや感情を相手に伝えましょう。怒りをため込んで、ずっとムカムカしているよりは、伝えたいことをきちんと伝えたほうがはるかに建設的ですし、心理的にも健康でいられます。

内藤 誼人
心理学者