肥満による健康リスクは、多くの方が警戒していますが、実は高齢者になると「痩せ」であることも健康リスクになりかねません。なぜそのような事態になるのでしょうか。また、回避策はあるのでしょうか。※本連載は、医師・常喜眞理氏の著書『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。
70代…よく動き、よく食べるには、社会とのつながりが必要です
筋力低下のスパイラル「ロコモティブシンドローム」を紹介しましたが(『恐ろしい…「運動しない中高年女性」の末路。運動機能の〈加速度的な低下〉がもたらす、ツラすぎる老後』参照)、これには続きがあります。活動量が落ちることによる食欲不振と低栄養状態です。ロコモにより活動量が低下するせいでお腹が減らず、食事量が低下。慢性的な低栄養状態となり、さらに筋力が落ちていく……まさに悪循環ですね。
これは「フレイルサイクル」と呼ばれるもので、このサイクルに落ち込むと、みるみる体力が失われていきます。フレイルサイクルに陥らないためにも、とにかく70代からは痩せてはいけません。
「痩せ」こそ、フレイルの引き金です。
よく動き、よく食べ、しっかり休む。フレイルではなく、こちらの幸せサイクルに持って行きたいものです。
しかし、よく動いてよく食べることは意外に難しいのです。どちらも持続させるためには、楽しくなければなりません。
たとえば運動にしても、1人でただ黙々とスクワットを続けられるでしょうか?
筋力トレーニングは大切ですが、外出して人に会ったり、コンサートや映画に行ったり、旅行をしたりするほうが、よほど楽しいはずです。
そして外出して好きなことをする体力を保つためと思えば、筋トレにも張り合いが出ることでしょう。
とにかくウインドウショッピングでも何でもいいですから、何か“目的のあるお出かけ”を心がけてください。
食事も同じことです。近年、1人暮らしの高齢者が増えているようですが、1人で黙って、あるいはテレビを眺めながら摂る食事は味気ないものです。
食べることに対して、つい興味が薄れてしまうことでしょう。
やはり週に1回でも、誰かと一緒に食べる機会をつくりたいもの。家族と同居なら、家族以外の人とも食べること。
どこかに旬のものを食べに行ったり、あるいは料理を誰かにつくってあげたり、つくってもらったり………食べる楽しさを誰かと分かち合う。この分かち合うことこそ、人生の醍醐味(だいごみ)かもしれません。
要するに「動く」にしても「食べる」にしても、社会とのつながりが必要になってきます。
それは仲間とのつながりと言ってもいいでしょう。
できれば若いうちから、そんな仲間をつくっておければいいのですが、オープンな気持ちで接すれば、何歳からでも友人はできるものです。そしていま、仲間がいる方は、そのおつきあいを大切にしてほしいと思います。
最近、無沙汰をしている友人がいたら、自分から会おうと声をかけてみてはいかがですか?
◆1日をトータルに考えて、バランスよく食べる
さて、では何を食べるかですが、もちろんバランスよく食べてください。炭水化物、タンパク質、脂肪、野菜、発酵食品、などなどです。
特に注意したいのはタンパク質です。高齢者のタンパク質不足は最近、よく言われるところです。食が細くなると、どうしてもこってりしたものを避けてしまいがちですが、肉でも魚でも、あっさりとした味つけにできるはずです。
そういえばかの日野原重明(ひのはらしげあき)先生は、90歳をすぎても週に1、2度のステーキを欠かさなかったとか。
しかし絶対的な食事量が減っているのですから、3食すべてバランスよくというのも、難しいかもしれません。
ならば1日の食事をトータルで考えてください。朝食、昼食でタンパク質が摂れていないなと感じたら、意識的に夕食は肉料理にしてみるとか、朝は必ず発酵食品を摂ることにするとか………。
以上、ご参考にしていただければ幸いです。明日も人生を楽しむために、どうかしっかり食べてくださいね。