若いころはぐっすり眠れて、目覚めも爽快だったのに…。中高年になると「眠れない」「スッキリしない」といった悩みを抱える人が増えてきます。しかし、この問題を医学的な観点から考えると、また違った向き合い方があるようです。※本連載は、医師である常喜眞理氏の著書『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。
加齢とともに睡眠時間が短くなるのは当たり前
中高年になると、どうしても睡眠の質も量も低下して、不眠を訴える人が少なくありません。これは“眠る体力”が加齢で落ちてきているためで、ある程度は仕方がありません。眠るにも体力がいるのです。
必要な睡眠時間というのは、10代からどんどん減っていきます。歳をとれば活動量も減りますし、基礎代謝も減りますから。
つまり見方を変えれば、「それほど眠らなくてもいい体になった」とも言えます。
ここをしっかり認識してほしいですね。以前とは体が変わっているのです。
さらに「眠れない」と不満を感じる方に知っていただきたいのは、睡眠には個人差があるということ。眠りのパターンは人それぞれなのです。
「1日8時間は寝なくちゃいけない」とか、「若い頃には9時間、10時間眠れたのにおかしい」とか、他人や若い頃の物差しで判断すべきではありません。そういうネガティブな考え方から不満を募らせるのは、睡眠には逆効果です。
1日に4~5時間しか眠れなくても、それで社会生活に支障をきたしていないのなら問題ないわけです。
30分以内の昼寝は健康によいとも言われますので、眠くなったら、積極的に昼寝を取り入れてもいいと思います。
決まった時間に起きることが、安定した睡眠につながる
眠れなくて死んだ人はいません。要はあまり深刻に考えないことです。体力の低下が睡眠の質と量の低下につながっていると言いましたが、「不眠症」となると体力ではなく、むしろ心の問題です。
これは社会的なルールに縛られていることも大きいかもしれません。会社に行くために毎朝6時に起きなければいけない、とか。
「いま、午前3時だから、もう3時間しか寝られない。それなのにまだ寝つけない。明日は大事なプレゼンがあるのだから、ボンヤリした顔をしていられない。どうしよう!」というように、眠れないという焦燥感と、パフォーマンスの低下に対する予期不安が、不眠症のきっかけになることもあります。
ただ、起きる時間を決めることは、安定した睡眠を得るのに大切です。
人間の体内時間というのは、1日が24時間よりもちょっとだけ長いのです(平均して24時間10分程度と言われています)。だから放っておくと、少しずつ後ろにズレます。
かといって自然にまかせて、昼間寝て夜中じゅう起きているというのも、社会生活上うまくありません。
夜更かしが続いても、朝に決まった時間に起きることで、一定のところで疲れが溜まって早く眠たくなります。こうして補正されていくわけです。