30歳以上年下の気怠い部下、タナカがサブロウのよき相談相手に

主:俺はタナカの言葉に思わずうるっときてしまった。どうも定年が近いこともあって、若い社員の気持ちをおもんぱかる気持ちが薄れていたようだ。俺は若い頃「こういう大人にだけはなりたくないな」って奴になっちまってたんだ。

なあ、タナカ。これからは仕事で困ってる時はなんだって相談してくれ。介護は教えてやれないが、仕事なら多少の経験がある。お前だけじゃない、他のやつらもだ。まあ俺はもうじき定年退職だけどな。1人で抱えるんじゃないぞ。

タ:え? いいんですか?

主:ああ、もちろん!

とはいえ、最初のうちは俺のことを怖がってる部下ばかりで、相談にくるやつなんてそういなかった。でも、タナカが俺にちょくちょく相談をしてくれるおかげで、他の部下たちも何かと俺に話してくるようになった。

俺がこれまで身につけたノウハウや経験を若者に伝えるのが俺にとってもやりがいになっていた。おかげで休憩時間には皆でコーヒーを手に話をしたりと、これまでより部署の空気もずっと良くなった!

主:タナカ、実は最近投資を考えてるんだよ。俺は脳梗塞の持病があるから、家をバリアフリーにリフォームする費用が稼げればと思ってな。

タ:へ~。部長、投資の経験なんてあったんですか?

主:いや、それがまったくないんだが。一攫千金を狙えたらなと思ってだな……。

タ:やめておいた方がいいですよ。僕の知り合いでも株やってる奴いますけど、短期間で大儲けしてる人なんて1人もいませんよ。基本はローリスクローリターン。3歩進んで2歩下がるなら儲けもん。一般人は細く、長く、焦らずが鉄則ですよ。

主:そ、そうなのか? サクッと稼いでスパッと終わらせたらいいと思ってたんだが。

タ:いやいや、サブさん仕事はすごいのに心配だなぁ。そんな考えだと投資詐欺に遭いますよ!真面目に。投資で稼ぐってなったら、その道の本職の人たちと同じ土俵で戦うことになるんですから。僕らが普段やってる機械のデータのチェックとかを素人がやって上手くできるかって話とおんなじですよ。

主:ああ……言われてみればそうだよなあ。いやあ、相談してよかったよ。

タ:リフォームするんなら、まず手すりの設置とか、スロープになる台を使ってみたらどうです? 案外それをやってみたら、大がかりなリフォームの必要性を感じなくなったって、この間シニア節約YouTuberが動画で言ってましたよ。

主:なるほどなあ! いやあ、流石はタナカだ、頼りになるよ!

タ:あはは、お役に立てて何よりです。

主:俺はタナカのアドバイスを聞いて、いくつかの工務店に相談をしてみた。家を丸ごとリフォームするとなると大金が必要だが、手すりの設置なら3万円~工事ができるとか、助成制度が利用できるケースもあるといったことを教えてもらった。

1人であれこれ考えて思い悩むより、人の意見を素直に聞くことの大切さを思い知ったよ。

ゆ:リフォーム代、随分節約できたようですね。

ワ:うんうん! 

タ:っていうかサブさん、そんなに老後資金が心配なら来年の定年で退職しないで、再雇用制度を使って65歳までうちの会社で働いたらどうですか? うちの会社は退職金が出ないし、来年辞めてもたいして旨味ないっすよ。一緒に働きましょうよ!

主:タナカ……。そうだな、お前と一緒ならあと5年がんばってもいいかな!

タ:やったー。あと5年伸びたことだし、2人で新しいプロジェクト考えるってどうですか?

主:国とか宇宙とか巻き込んだやつ

タ:おいおい5年で起動にのるほどほどのヤツにしてくれよ

ワ:サブロウさんとタナカさん、いいコンビだね!

ゆ:かつてのサブロウさんは自分の懐事情ばかり気にしていましたが、周りの人に興味をもち、人の事情に目を向けられたことで人としての幅が広がったようです。

ワ:定年後も余裕のある素敵なシニアでいてほしいね!