既婚者の場合、配偶者の生前と生後で、年金額が大きく変わることをご存じですか? 現代のシニア夫婦は元会社員と、専業主婦の組み合わせが最も多いといわれています。平均寿命は男性より女性の方が長いため、夫婦は夫が先立ち、妻が残されるケースが多くあります。夫の死後、遺族年金は? その他の保障は? 年金生活に待ち受ける落とし穴とは!?
65歳、専業主婦「えっ…たったこれだけ?」遺族年金の少なさに唖然。夫婦で年金月23万円だったが…夫急逝で受け取る「衝撃の年金額」
夫婦で月23万円だったが…専業主婦「えっ……たったこれだけ?」65歳の夫急逝で唖然とする「激減の年金額」
登場人物
・ゆめこさん(以下、ゆ)……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。
・ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。
・有識者のおじさん(以下、有)……難しい単語や複雑な制度を解説してくれる物知りな優しいおじさん。
・アキタショウコ(以下、主)……今回の主人公。66歳の専業主婦で、昨年夫が亡くなった。
・エミ(以下、娘)……アキタショウコの娘。喫茶店のオーナーパティシエ。
主:私の名前はアキタ ショウコ。今年で66歳になる。高校卒業後、地元の信用金庫に就職し、20歳のときに4歳年上の夫との結婚を機に寿退職、以来専業主婦よ。子どもが2人、娘と息子はすでに独立しているわ。
夫が60歳で定年退職した後は、2人で平穏な老後ライフを送ってきたけど、昨年夫が持病の心筋梗塞が悪化して亡くなってしまった。この1年間は葬儀や法事でバタバタとしていたけど、落ち着いた今、私はこれからの生活が不安でいっぱいよ。
ワ:長年一緒にいた旦那さんが亡くなっちゃったなんて……悲しいね。
主:夫を失ったことの寂しさもあるけれど、今はとにかくお金が不安なの。私は20歳からずっと専業主婦をしていたから年金額は夫に比べてずっと少ないのよ。
ゆ:ショウコさんご夫婦は、旦那さんが正社員、奥さんが専業主婦という、現代のシニア世帯にもっとも多い組み合わせですね。旦那さんの年金は月16万円、ショウコさんの年金は7万円ほど、合わせて約23万円です。
ですが、旦那さんが亡くなった場合、旦那さん自身が受給していた国民年金と厚生年金の支給は当然なくなり、ショウコさんは遺族厚生年金を受給します。実際にショウコさんが手にすることの年金額は合計で14万円ほどです。
ワ:そんなに減っちゃうの!?
主:夫は高血圧と過労が重なり、40代のときから持病の心筋梗塞を抱えていたから、先立たれることはある程度覚悟していたわ。
でも、まさか年金がこんなに減るなんて、思ってもみなかった……。思わず「えっ……たったこれだけ?」って声が出てしまったわ。「1人暮らしになれば生活費も半分、出費が減るから大丈夫なのでは?」と思う人もいるかもしれないけど、実際に月の家計支出ってそこまで減らないのよね。
電気代や光熱費の固定費は2人暮らしから1人暮らしでも大差ないしわ。1人暮らしの自炊はどうしてもお肉や野菜などの食材が余ってしまいがちで、食費が大きく減るわけでもない。1人暮らしになったからと言って、生活費半分になるわけじゃないのよ。
ワ:そっか……、年金は大きく減ったのに、月の支出はあまり減らないとなると、つらいね。
主:今の人たちはピンとこないかもしれないけど、私たち夫婦が結婚した時代はまだ「女は結婚したら家庭に入るのが当たり前」という時代だったのよね。まさかこんな風に年金で困ることになるなんて思いもしなかったわ。私たち親の世代は、老後は年金だけで生活していけるのが当たり前だったから、自分もそういう生活ができるものだと、思い込んでしまっていたの。
結婚してからというもの、夫は多忙で毎日遅かったし、家のことを全部1人でやってきた。頑張ってきたつもりだったんだけど…。家の仕事をどんなに頑張っても金銭的な報酬がもらえるわけじゃないのは、シニアになっても同じね。
ゆ:人生100年時代と言われる現代、「不謹慎」として距離をおかず、夫婦が健康な内にどちらかが亡くなった後のマネープランや老後の暮らしをシミュレーションしておくことは非常に重要です。
ワ:ショウコさん、これからどうしたらいいのかなあ。
ゆ:そうですね…、シニアになってから生活水準を大きく下げる、というのは難しいかもしれません。けれど、ショウコさんのことを支えてくれる人もいるかもしれませんよ?
(ガサゴソ……ガサゴソ……)
ワ:あれ、ショウコさんお引越ししてるね!
主:私は老後資金に心配があることを、思い切って子どもたちに相談してみたの。これから娘夫婦と一緒に同居することになったのよ。
ワ:おお! 娘さん?
娘は小さい頃からよく「ケーキ屋さんになりたい」と言ってたの。その夢を叶えるために、大学の経営学部に進学して通学しながら、製菓専門学校も卒業したのよ。卒後後単身フランスに渡って修行し、今は小さな喫茶店のオーナーパティシエをしているの。
娘:大学に入学したときに「パティシエになりたい」って言ったらお父さんは反対されたけど、お母さんはそんなお父さんを説得して、お母さんのへそくりで製菓学校にまで行かせてくれた。お母さんの応援してくれたおかげで私の人生は大きく変わったの。本当に感謝している。今度は私がお母さんをサポートする番よ。
ワ:ぐすん。娘さんいい人だね……。
主:娘夫婦と一緒に住み始めてビックリ! 娘はパティシエだから、作れるのはケーキやお菓子ばかりで、普段の食事は夫婦そろって外食やインスタント食品が中心だったのよ。今は私が料理を担当しているわ。娘夫婦も「美味しいご飯が毎日食べられて嬉しい」って言ってくれているの。助けてもらうばかりじゃなく、私があの子たちに協力できることがあってとってもうれしいわ。
やっぱり人間は役割がないとダメね。
ゆ:これからも娘さん夫婦と支え合っていってくださいね。応援しています!