障害を持つ子どもや集団での学習に困難を抱える子どもに対して教育支援を行う「特別支援学級」。そこに通う児童数は、10年間で2倍に急増しています。その理由を紐解いていきます。

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特別支援学級とは?

「特別支援学級」とは、障害を持つ子どもや集団での学習に困難を抱える子どもに対して、個別化された教育支援を提供するクラスです。小規模で個別化された指導をおこなうことで、子どもが自分自身のペースで学ぶことができます。

 

公立の学校では、上限は8人、平均3人と少人数で、学年や年度によってクラス編成をおこなうのが一般的です。児童数が多くなる場合は、知的障害、情緒障害、肢体不自由の児童を分けるといった、障害の種別によってクラス分けがおこなわれます。

 

また、通常学級に入学した児童が、発達度合い、本人や保護者の希望、または事故や病気による肢体不自由などを理由に、年度途中や進級のタイミングで特別支援学級に移る場合もあります。特別支援学級では、通常のカリキュラムに加えて、子どもの障害や困難に応じた「特別の教育課程」を提供することができます。

 

この「特別の教育課程」では、以下の3つをおこなうこととされています。

 

①自立活動を取り入れること

②必要に応じて、下の学年の各教科の目標や内容に代替することができること

③必要に応じて、知的障害特別支援学校の各教科で代替することができること(知的障害のある生徒のみ)

 

「自立活動」では、 子どもの発達状態やニーズに合わせて、必要な項目を具体的に指導としておこない、自立を促していきます。

 

たとえば、自分の気持ちを相手に適切に伝えることが難しい子に対して、実際に困った場面の絵カードを見せ、どんな言葉で伝えるのが適切かを考えるなどです。ロールプレイングで実際にその役になりきって言葉をかけてみることも、俯瞰的に状況を捉え、適切な言い方を選択して答える練習になります。

 

また、通常学級の生徒と特別支援学級の生徒が教育の一環として活動を共にする「交流及び共同学習」は、「交流学級」「協力学級」などと呼ばれています。この「交流及び共同学習」は、特別支援学級の子どもの自立と社会参加を促進するとともに、社会を構成するさまざまな人々と助け合い支え合って生きていくことを学ぶ機会として設けられています。

 

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特別支援学級の児童数が倍増している理由

特別支援学級に在籍する児童生徒数は、2010年の14万人に対して、2020年は2倍の30万人に増えています(学校基本調査より)。その中でも、一部の発達障害が含まれる「自閉症・情緒障害」の児童生徒数は、10年間で2.7倍にまで増えています。

 

理由として考えられるのが、2007年の特別支援教育制度の改正です。それまで障害の種類によって、盲・ろう・養護学校や特殊学級に振り分けられていた「特殊教育」が、改正を機に「特別支援教育」に転換しました。

 

従来の障害に加えて特別支援教育の対象になったのが、発達障害です。これにより、対象となる子どもの数が大幅に増えたのです。加えて、発達障害への認識や理解が進んできたことも要因の一つと考えられます。

 

過去には見過ごされていたり、誤解されていたりした障害が、今日ではより正確に診断されるようになってきています。これに伴って、支援が必要な子どもたちが早期に診断を受け、就学前から療育を受けたり、特別支援学級に入学するケースが増えています。

 

保護者の方の意識の変化も大きな要因です。以前は、特別支援学級に子どもを通わせることに対して否定的なイメージを持つ方も少なくありませんでしたが、最近では個別のニーズに合った教育が重視され、肯定的に捉える方が多くなりました。これは、社会が多様性を受け入れ、個々のニーズを尊重する方向に進んでいることの表れでもあります。

 

特別支援学級では、児童生徒一人ひとりに合わせた指導目標が掲げられています。発達に凸凹のある子が、より充実した支援を受けられることや、一人ひとりに合わせたきめ細かな対応を受けられることから、特別支援学級を選択肢に選ぶご家庭も増えています。

 

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本連載は、株式会社コペルが運営するホームページ内のコラム(https://copelplus.copel.co.jp/column/)を転載・再編集したものです。