少しずつ味わって楽しみたい「日本酒」。一度封を開けたら、どれくらいフレッシュな美味しさを保てるのでしょうか?葉石かおり氏監修、近藤淳子氏著の『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、詳しく見ていきましょう。
日本酒に「賞味期限」はある?
開栓前の日本酒であれば、賞味期限はありません。ほとんどの食品や飲料には賞味期限が記載されていますが、日本酒には表示義務はなく、開栓前の日本酒であればアルコールの殺菌作用によって腐ることがないため、長期間の保存が可能とされているからです(蔵のポリシーで、賞味期限が設けられている稀なケースもあります)。
ただ、日本酒は非常にデリケートな酒質なので、①光(日光)、②温度、③酸素の影響を受けやすいことを覚えておくと良いでしょう。
例えば、夏場に直射日光の当たる室内に置きっぱなしにすると、日光と温度の影響を受けて、「老香(ひねか)」という、腐った沢庵のようなオフフレーバーが発生し、酒質が劣化する可能性があります。また、日本酒を長時間開栓したままにすると酸化が一気に進み、鼻につくような酸っぱい匂いがしてくることもあります。
特に火入れ※1をしていない生酒は酒質が変化しやすいので注意が必要です。私は、生酒(四合瓶)ですとフレッシュ感を楽しみたいため、開栓後3日以内くらいで飲み切るようにしています。火入れされている日本酒は常温保存でも大丈夫ですが、光と温度には気を付けた方が良いので、季節を問わず冷蔵庫に入れています。
※1 ろ過後、通常2回の「火入れ」を行います。1回目はろ過後、2回目は瓶詰め前。火落ち菌や酵母などの微生物を死滅させ、さらには残存する酵素の働きを止め、劣化を防ぐことが目的です。
日本酒は、しっかりした環境で保管して、ベストな状態で楽しみたいものです。
万が一、酒質が劣化してしまった場合は、お風呂に入浴剤として入れると、アミノ酸によるお肌の美容効果が期待できます。煮物や炒め物の味わいをマイルドにしてくれる効果もあるので、料理酒としても活用できます。
近藤 淳子
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
副理事長、フリーアナウンサー
葉石 かおり
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト