「わかったつもり」になるトレーダー
すべてのことを知っている全知全能な人間は存在しません。人々が問題なく日常生活を送れている理由は、コミュニティによって知識の共有がされているからです。
たとえば、美味しい食事が提供されるレストランでは、料理に精通した料理人、サービスの勉強をしたウェイトレス、コストを細かく計算する支配人など、人々が専門知識を共有することで成り立っています。誰かひとりでレストランを経営しようとしても成り立たないでしょう。知識の共有は、人類が効率的に進化するうえで欠かせない要素なのです。
人類が効率的に問題解決を行える一方で、時に知識の共有は個人にデメリットをもたらします。その代表例が、物事をいかにも「わかったつもり」で振る舞う人々です。システムや仕組みを当たり前のように使っているが故に、自分がその構造のすべてを理解しているかのように錯覚してしまう人が存在します。
知識の錯覚は、人々に非合理的な行動でも実行に移してしまう理由へと変貌することもあるので、慎重に対応していかなければなりません。特にFXでトレードしていくにあたって、知識の錯覚は大きな不利益をもたらす可能性があります。
次に、FXにおいて「わかったつもり」になることで生じるデメリットを解説していきます。
わかったつもりになると、なかなか「損切り」できなくなるワケ
FXトレーダーとして「わかったつもり」の罠にはまってしまうと、なかなか損切りができないトレーダーになってしまう可能性があります。
テクニカル分析を勉強したての初心者トレーダーは、インジゲーター※1の動きやプライスアクション※2に一喜一憂する傾向があります。そして、勉強したテクニカル分析を用いて利益が乗ってくると、あたかもトレードのすべてがわかったかのように値動きを予想するようになります。
※1 チャート上やチャート下部に表示するサポートツール
※2 「プライス(値段)のアクション(動き)」=「値動き」そのものを分析してチャートに刻まれた投資家心理を読み解き、相場状況を判断していく分析手法
自らの力を過大評価してしまう初心者トレーダーは、相場の本当の恐ろしさをわかっていません。相場は時に、誰も想定していないような急な値動きをすることがあります。そのような事態に陥ったときに重要なことは、素直にトレードをやめることです。
プロトレーダーであれば、自分が想定していた流れと異なる相場が訪れたときは、トレードを見送ります。しかし、テクニカル分析のすべてをわかったつもりになっている初心者トレーダーは、自分の分析力を発揮すれば、どんな急変相場でも対応できると確信してしまいます。
プロトレーダーでも見送るような相場で、初心者トレーダーが利益を残せるかどうかは解説しなくても結果がわかるでしょう。自分を過大評価してしまう「わかったつもり」はFXの世界において非常に厄介な心理状態なのです。