受験シーズンも終盤戦。すでに進学が決まり、その準備に忙しい家庭もあるのでは。一方で嬉しいはずの子どもの進学を、心から喜べない親もいるようです。みていきましょう。
同じ学校に通っているのに、不公平じゃないですか?都外在住「年収700万円」47歳のサラリーマン、「東京都の高校実質無償化」に感じる不条理

高校無償化と騒がれているが…それでも教育費の負担は重い

東京都では「2024年度から高校や都立大学が実質無償化」と騒がれました。

 

しかしこれを正しくいうなら、授業料の無償化。公立高校の学校教育費のうち授業料は5万2,120円で、基本的に無償化の対象は全体の6分の1ほど。一方で、私立高校の場合の学校教育費は平均75万0,362円で、授業料は平均28万8,443円。46万円ほどは無償化の対象外となります。

 

――授業料が無料になっても、やっぱり教育費の負担は重い……

 

「高校無償化」は高校でかかるすべての費用を無償にする制度ではなく、学校外の教育費をどんなに削ったとしても、公立高校なら年間25万円ほど、私立高校なら年間46万円ほどの負担は覚悟しなければなりません。

 

都民の生徒と都外の生徒…3年で140万円強の教育費格差

高校では授業料以外の教育費負担が大きいものの、やはり授業料分でも無償になるのはありがたいこと。しかし、ニュースでいわれている高校無償化は自治体独自のもので、今後、居住地によって教育費格差はいっそう拡大しそうです。

 

国の高等学校等就学支援金では、世帯年収約590万円未満であれば年間39万6,000円を上限に、約910万円未満であれば11万8,800円を上限に助成します。東京都はこの制度に上乗せする形で助成を行ってきましたが、所得制限を撤廃し、都内私立高校の平均授業料分を上限に助成を行います。

 

対象となるのは「都内在住」。東京都によると、都内の私立高の生徒は約18万人。そのうち5万人強は都外在住です。首都圏のほか5県にも国の支援金に上乗せする形の独自補助があるものの、所得制限があるうえ、東京都同様、県内の私立高校に通う生徒であることが条件です。つまり都内の私立高校に通う生徒は外れてしまうのです。教育費負担の差は、実に3年間で142万円ほどになる計算です。

 

――同じ学校に通っているのに、不公平じゃないですか?

――川を渡れば東京なのに……ちくしょう!

(息子を私立高校に通わせる、都外在住・47歳の男性)

 

「東京都の高校授業料実質無償化」のニュースが流れると、そんな呟きが溢れました。子どもが同じ教室で学びながらも、教育費の負担に142万円もの差。

 

――そんなお金があったら、子どもの大学受験に向けて、もっと塾に行かせてあげられるのに……

 

今後、居住地による教育費負担の格差は、ますます拡大するだろうと専門家。あまりに不公平感がう大きくならぬよう、国による統一的な対応が求められています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

文部科学省『子供の学習費調査』

文部科学省『高校生等への修学支援』