繰上げ受給・繰下げ受給、実際に活用している高齢者はどれくらいいる?
年金の繰上げ受給と繰下げ受給。ここで話題に挙げられるのが、「いつもらうのがお得」という論争です。
仮に「70歳」まで繰り下げたときの損益分岐点は「81歳11ヵ月」、「75歳」まで繰り下げたときの損益分岐点は86歳11ヵ月となります。また「60歳」まで繰り上げたときの損益分岐点あh「80歳10ヵ月」です。
ただしこれは額面で考えた場合。手取りベースであれば、「60歳繰上げ」で82歳2ヵ月、「70歳繰下げ」で84歳1ヵ月、75歳繰下げで89歳2ヵ月となります。男性の平均寿命は81歳ほどですから、75歳まで繰り下げたら、ほとんどの男性は損をする、という結果になるのです。
しかしこれはあくまでも算数の問題。人間の寿命は誰もにも分からず、得するのか、損するのか、評価は難しいといえるでしょう。
そんななか、実際の年金受給者は、繰上げ受給を選択しているのか、それとも繰下げ受給を選択しているのか、どっちなんでしょう。
前述の厚生労働省の資料によると、国民年金受給者3,433万6,782人のうち、原則とおり受け取っている人たちは2,997万0,646人。全体の87.3%を占めています。
そんななか、国民年金を繰上げ受給している人は369万3,670人で、全体の10.8%。それに対して、国民年金を繰下げ受給している人は67万2,466人で全体の2.0%です。
過去5年の推移をみていくと、繰上げ受給は12.9%→10.8%と2.1ポイントダウンしたのに対し、繰下げ受給は1.3%→2.0%と0.7ポイントと上昇しています。
年金額を増やすことのできる繰下げ受給の話題を耳にすることが多いですが、実際に制度を利用しているのは増加傾向とはいえ2%ほどしかいません。また年金の受取年齢については、60歳定年から65歳の年金受給開始までの無収入の5年間がクロースアップされ、不安定な家計を助けるものとして、繰上げ受給を推奨する専門家も。しかし昨今は、65歳、さらには70歳まで安心して働くことのできる環境が整いつつあり、繰上げ受給を選択する人は減少傾向にあるようです
――年金をいつもらうのか、得か、損か。
諸先輩の声を聞く限り「原則通り65歳からもらう」が無難であり、老後のプランも立てやすいタイミングだといえそうです。
[参考資料]