ものすごい勢いで1,000万円を使い切ったA君
そのとき感じた違和感は見事的中することに。
融資から3ヵ月後、先輩からまさかの一言が。
「Aさん、自宅じゃないほうの不動産を売却して1,000万円を完済するんだって」
「え?」筆者は耳を疑いました。どう考えても、X社と他社の返済に使ったお金はせいぜい250万円。700万円の融資枠は残っているはず。
すぐにA君の利用履歴を見てみました。すると、ATMから頻繁に50万円を借りていることがわかります。そして、借入残高もあっという間に上限の1,000万円に……。
しかし、A君の仕事は年収350万円の家電量販店の派遣社員。頻繁に50万円が必要となる仕事ではないはずです。推測するに、22歳の若者が「1,000万円」という高額の融資枠を持ってしまったがために、散財してしまったのでしょう。
3ヵ月後、追い打ちをかける出来事が…
その3か月後、今度はA君の返済遅延が始まったのです。
A君は、前に不動産を売却して1,000万円を完済したはずです。しかし実は、最初の完済時に自宅に付いていた担保を外しておらず、1,000万円の融資枠を残していたのです。そして、また借り始めたようでした。
さすがに、自分と家族が住んでいる家をすぐに売却するわけにはいきません。回収担当者には、「カーナビを売ってどうにかする」と返済の猶予を申し出ていたようです。
売っても何万円にしかならないカーナビ。対して、毎月の返済金額は約20万円。まったく足りません。
結局、X社の不動産部門に「任意売却」という手段で残りの1,000万円も完済し、家を手放したとのことです。父が亡くなってから、1年足らず。
遺してくれた自宅と土地・建物。計2軒の不動産を担保に2,000万円借りて、短期間で溶かしてしまった22歳のA君。
住む家を失くした母と妹さんの詳細はわかりませんが、当時、筆者と同い年でお金で失敗したかつての同級生に気の毒と思わずにはいられませんでした。