コーヒー豆のひき具合で、コーヒーの濃度は変わります。自分好みのコーヒーを飲むために、コーヒー豆を挽くミルの選び方をみてみましょう。家庭でも挑戦できるおいしいコーヒーの淹れ方について、著書『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より、畠山大輝氏が解説します。
コーヒー豆は粉にすると劣化が早まる
コーヒーを淹れるとき、豆の状態ではなく、粉の状態にするのはなぜでしょう。
コーヒー豆の中にはハニカム(蜂の巣状)構造の部屋が無数にあり、その1つ1つにコーヒーの成分が収まっています。コーヒーを淹れるとき、コーヒー豆を挽いて(粉砕して)粉にしてからお湯を注ぐのは、無数に連なるハニカム構造の部屋の壁を破壊することで、中にあるコーヒーの成分とお湯とを触れ合いやすくするためです。
これは見方を変えれば、コーヒー豆は挽いたときから急速に劣化が進行するということでもあります。この劣化には2つの面があって、1つは酸化、もう1つはコーヒー豆に含まれるガスとともに香りの成分も抜けてしまうことを指しています。
こう聞くと、「豆の状態でも酸化やガス抜けは起こるのではないか?」と思われるかもしれません。それも確かにありますが、実は、コーヒー豆は粉の状態に粉砕されると、その表面積は豆の状態と比較して1,000倍近くにまで広がるともいわれています。つまり、それだけ広い面積に対して酸化(風味の劣化)とガス抜け(香り抜け)が起こってしまうわけです。
買ってきてすぐはいい香りがして、淹れるとおいしかったコーヒーの粉が、1週間、2週間と日にちが経つにつれてどんどん香りがなくなり、おいしくなくなってくる理由はここにあります。お店でコーヒー豆を買うときに、「豆のままか、粉に挽くか」と聞かれることがあると思いますが、酸化や香り抜けが起こりにくいという意味でいえば、豆のままで買ったほうがベターといえるでしょう。ただし、お店で挽いてもらって、粉の状態で買ったほうがいい場合もあります。
細挽きと粗挽きでコーヒーの濃度は変化する
次に、コーヒー豆の「挽き目」について。挽き目とは、コーヒー豆を粉砕するときの粒の大きさ(粒度)のことで、「メッシュ」といういい方をすることもあります。
挽き目には大きく6段階があって、粒が大きい順に「粗挽き」「中粗挽き」「中挽き」「中細挽き」「細挽き」「極細挽き」というふうに分けられますが、実際にはミル(グラインダー)の設定によって、もっと細かく調整することも可能です。
この挽き目によって何が変わるかというと、コーヒーの濃度(コーヒーの成分が引き出される量)が変わってきます。
コーヒー豆の内部はハニカム構造が連続した部屋になっているという話をしましたが、この部屋は、挽き目(粒度)が細かければ細かいほどたくさん破壊されることになり、内部にあるコーヒーの成分がお湯に溶け出しやすくなります。
つまり、細挽きのほうが成分が溶け出しやすいぶんコーヒーの濃度は高くなり、粗挽きのほうが成分が溶け出しにくいぶんコーヒーの濃度が薄くなるわけです。
いうまでもなく、コーヒーの味は濃度によって大きく左右されます。
同じ条件で抽出している場合、濃度が高いということは、それだけいろいろな成分が溶け出しているので、コクやボディを感じる一方で、雑味などのネガティブな要素が出ている可能性も高くなります。
逆に濃度が低ければ、ネガティブな要素が含まれる可能性は低くなりますが、成分があまり出ていない状態なので、味や香りに物足りなさを感じてしまうかもしれません。
だから、成分が出過ぎ(過抽出)ても、出なさ過ぎ(未抽出)てもだめで、ということは、挽き目が細かすぎたり、粗すぎたりするのもだめだということになります。
中粗挽きは、抽出のコントロールがしやすい挽き目です。
ただし、中粗挽きの基準は、人によって、あるいは使うミルによっても異なります。私が考える中粗挽きは、グラニュー糖よりも少し粒が大きい程度です。この挽き目を基準に、ミルの設定を少し粗めだったり、少し細かめだったりという具合に、粒度を調整してみるのがおすすめです。
粉の挽き目が細かいほどお湯に溶け出す成分が多くなり、濃度が上がります。逆に、挽き目が粗いとあっさりしたコーヒーになります。
業務用のグラインダーで挽いた中粗挽きのコーヒー粉。指でつまむとわかりますが、グラニュー糖よりも少し大きめのサイズです。