湯の「注ぎ方」で豆の実力を引き出す

豆の成分がお湯の中に移動する

ドリップの際のお湯の注ぎ方についてお話しします。

まず、お湯を注ぐ回数ですが、「基本のレシピ」では5回に分けて注湯を行います。

1投目で粉に蒸らしのお湯を注ぐと、粉とお湯が混ざった状態になります。そこに2投目、3投目と注湯を繰り返すと、その都度、粉が撹拌されます。この撹拌の中で、豆の中にある成分がお湯の中に溶け出し、重力によって滴下していきます

前にも述べたとおり、豆から溶け出しやすい成分は、時間経過によって異なる(順番がある)ので、撹拌と滴下を繰り返すことで、メリハリのある抽出を行うというわけです。

ちなみに「基本のレシピ」では、2投目までに全体の半分の量のお湯を注ぎ終えます。これは、前半に抽出される成分が味わいに大きな影響を与えると考えるからです。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
【図表1】注湯されるたびに抽出力が高まる 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋

真ん中の層にしっかりとお湯を注ぐ

次はお湯を注ぐ位置についてです。コーヒーにお湯を注ぐときは、粉面の真ん中あたりから「の」の字を描くように回し入れるというイメージを持っている人が多いと思います。そのほうが粉全体にお湯が行き渡りやすいためで、ドリッパーの形状に関わらず、基本的にこの方法で間違いはないでしょう。

「基本のレシピ」では、円すい型のドリッパー(フラワードリッパー)を使っています。まず真ん中にお湯を注ぎ、そこから円を描きながら外側のほうに円を広げていきます。外側までいったら、今度は真ん中に戻るように円を小さくしていきます。1投目の蒸らしから5投目まで、基本的にこの動きを繰り返します。

前述しましたが、この注ぎ方は、真ん中にいくほど粉量が多くなる円すい型の中で、効率よく撹拌を起こして抽出にばらつきが出ないようにするためです。特に円すい型のドリッパーは、台形型のドリッパーなどに比べて真ん中の粉の層が厚いので、下のほうまで十分にお湯が行き渡るようにしっかりと注湯してやることが大切です。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
【図表2】中心部は外側より多めに注湯する 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋