ドリッパーひとつとっても、円すい型に台形型…その種類はさまざまです。どの形状を選ぶかによって、お湯の抜け具合や抽出の難易度が変わり、味にも変化が出るとコーヒー抽出士の畠山大輝氏はいいます。家庭でも挑戦できるおいしいコーヒーの淹れ方について、畠山氏の著書『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より詳しく見ていきましょう。
ドリッパーで味の方向性が変わる
スペシャルティの世界では「円すい型」が流行り
ご存じのとおりコーヒーの味は、使うドリッパーによっても変わります。
ドリッパーは、大きく2つの視点で考えると選びやすくなります。1つは、形状の違い、そしてもう1つは、素材の違いです。
まず形状の違いですが、円すい型、台形型、円筒型と呼ばれるものが代表的です。形状が違うことによって、お湯の抜け具合や抽出の難易度が変わってきます。
円すい型は、下に大きな穴が1つ開いていて、お湯抜けがとてもスピーディです。お湯抜けとは、お湯を入れたときにそれが下に落ちる速さのこと。
円すい型はお湯がサッと抜けるので、そのぶん抽出をコントロールしやすいのですが、いっぺんにザバッとお湯をかけてしまうと、すぐ抜けてしまって、コーヒーが少し薄めに仕上がってしまいます。そのため、このドリッパーを使うときは、基本的には何回かに分けて注ぐという淹れ方が主流になります。
円すい型のドリッパーは世界的にもポピュラーで、スペシャルティコーヒーの店では使っているところが増えているので、お店でコーヒーを飲んだり、豆を買ったりする際に、淹れ方のアドバイスを聞いてみるのもいいと思います。
代表的なメーカーは、ハリオやコーノ、CAFECです。私はいつもCAFECの「フラワードリッパー」を使用しています。2019年のハンドドリップチャンピオンシップも、このドリッパーを使って優勝しました。
「フラワードリッパー」には、おすすめのポイントが2つあります。
1つ目は、お湯抜けが非常に速いので、抽出のコントロールをしやすいという点。
2つ目は、リブ(ドリッパーの内側に刻まれた溝)が深いので、蒸らしの際にペーパーフィルターが少し外に膨らんで、その分、蒸気がすき間から抜けやすくなり、効率的に粉を蒸らすことができます。
「台形型」ドリッパーは抽出にブレが出にくい
次は、台形型のドリッパーです。
台形型タイプは底に小さい穴が開いていますが、この穴の数が1つ、2つ、3つなど、製品によって異なります。この穴の数や穴の大きさによってコーヒーが下に落ちるスピードに違いがあるので、それに合わせてちょっとゆっくり注いだり、ちょっと速く注いだりなどのコントロールが必要になります。
いずれにしても、円すい型に比べてお湯の落ちるスピードがゆっくりめになるので、ドリッパー内にお湯が留まる時間が長く、そのぶん抽出にブレが出にくい(毎回、同じように抽出しやすい)というメリットがあります。その半面、円すい型に比べると、お湯の量を細かくコントロールして味を調整できる幅は小さくなります。
ただ、台形型のドリッパーは、カリタをはじめとてもポピュラーな存在なので、ドリッパー自体はもちろん、ペーパーフィルターを手に入れるのも簡単です。フィルターを切らしたときに、近所のスーパーやコンビニで買えるというのは、とても大きな強みです。
円すい型や台形型、円筒型など、ドリッパーにはいろいろな形があります。形やお湯が抜ける穴の大きさ、数によって抽出に特徴が出ます。私が普段使うのは円すい型の「フラワードリッパー」(写真1・中央)です。
メリタの台形型ドリッパーは、底に小さな穴が1つしかなく、ほかのドリッパーに比べてお湯抜けがゆっくりになります。1投式、もしくは2投式でお湯を入れるのが基本なので、細かなテクニックを使う必要がありません。
台形型のドリッパーでおすすめなのがメリタです。このドリッパーは、底に小さな穴が1つしかないので、お湯抜けの速度がとてもゆっくりになります。基本的に1投式もしくは2投式で抽出するので、やかんなどでお湯を沸かして、そのままザバッとお湯を入れるだけでも、比較的おいしいコーヒーが出来上がります。
まだドリップポットを持ってないとか、ハンドドリップはまったくの初めてといった方にもおすすめできるドリッパーだと言えます。