京都には、カフェやホテルとして利用できる名建築があります。そのなかには、2020年隈研吾の設計でリニューアルオープンした話題の建築物も。おさんぽしながら立ち寄りたい名建築の数々について、『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ 増補改訂版 』(エクスナレッジ)著者の円満字洋介氏が紹介します。
2020年<隈研吾>の設計でリニューアルオープンした建築物とは!?…京都だけにある「名建築」を巡るおさんぽルート【専門家が解説】
二条駅界隈へは染め物業者が集まった
二条駅界隈は鉄道開通とともに倉庫街となり、駅の西側は田園地帯だった。そこへ綿ネル製造のレンガ造り工場が立地してから歴史的風景は展開する。工場のまわりに京染め業者たちが市内から移ってきた。堀川沿いは江戸時代以来、京染め業者の集まっていた地域で今でも染め物屋が多い。堀川は戦後もずいぶん長く友禅流しの光景が見られた。この地域は京都のなかでもまちづくりに熱心な地域のひとつとして知られ、工房めぐりなどのイベントも開かれている。
唐破風を備えた銭湯
JR二条駅から南へ向かう、NISSHAの西側の地域は、戦前の借家街がまるごと残っている。借家街につきものなのが銭湯だ。この芋松温泉も周辺借家街とほぼ同時にできたと考えてよい。唐破風を備えた立派なつくりである。もしルートを逆にたどったなら、ここでひと風呂浴びたいところだ。
赤いレンガ工場と白い洋館事務所
七本松通りと山陰線にはさまれたNISSHAには、いろんなタイプのレンガ造りの工場がある。これだけまとまって残っているのは関西では珍しく、南側の正面入り口近くには、2階建ての旧事務所棟も見える。この工場は、元は綿ネルの製糸から織布までの一貫工場で、1,000名以上が働く大工場だった。まわりに集まったのは、市内から移ってきた京染め業者たちだ。当時、二条から壬生へかけては一大染業地帯だったのだ。
三角出窓がかっこいい
壬生川通りを四条通りから北へ向かい、姉小路通り沿いの旧京都市立教業小学校は、正面の三角出窓がスマートでかっこいい。アールデコといっても良いだろう。出窓を含めてスチール製のサッシがほぼ残っているのも珍しい。アルミよりもスチールのほうが強度があるのでラインは細くなり、よりシャープな造形が可能だ。タイルも砂岩に似た感じの珍しいものを使っている。
和と洋の不思議な調和
堀川通りを越えて三条通りを東へ、新町通りを南へ向かったこの八竹庵は、京都を代表する呉服商美濃利の井上家住宅として建てられた。数寄屋大工の上坂浅次郎が手掛けた名建築である。玄関脇の応接間と2階洋間は建築家武田五一のデザインで、和風と洋風のデザインを混ぜた武田好みのインテリアを楽しむことができる。その後、建物は京染の襦袢メーカーであった川崎家の所有となった。川崎家は所有権を自社へ移し、襦袢美術館・紫織庵として活用してきた。2021年に町家再生を手掛ける「くろちく」が取得し、翌22年より八竹庵として公開されている。