建築と自然の一体感を大切にするフランク・ロイド・ライトの世界観

出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真1]ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸) 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

フランク・ロイド・ライトの作品は自然との一体感を大事にするものが多い。もともと日本びいきで知られているが、おそらく東洋的な自然に寄り添った精神世界に対するあこがれがあるのだろう。樹林に埋もれるように建つこの建築を見ているとそれがよくわかる。

01.山小屋風現役医院「重信医院」

阪急芦屋川駅北口すぐの重信医院は駅前の洋館で、大切に使われてきたことがよくわかる今も現役の医院だ。スイスにでもありそうな山小屋風のデザインである。玄関ポーチのボーダータイルを飾り貼りにした柱や、欄間のステンドグラスなど見所が多い。窓や屋根も竣工当時のままだろう。塀のスクラッチタイルが珍しい。

1926年 林 芦屋市西山町11-3 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真2]重信医院 1926年 林 芦屋市西山町11-3
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

02.内部も必見。フランク・ロイド・ライトの精神世界「ヨドコウ迎賓館」

芦屋川沿いに北へ向かい、開森橋を渡ってさらに北のヨドコウ迎賓館は、清酒「桜正宗」の醸造元である山邑家の邸宅として建てられたライトの作品である。斜面を昇っていくように建てられている。外壁から屋上を飾る独特の装飾は、メキシコの古代文明マヤの遺跡から着想している。内部は日本建築の良さを応用しており、いたるところに風抜き穴がある。道路側からは何も見えないので、公開日を確認して内部もぜひ見学してほしい。

1924年 F.L.ライト、遠藤 新、南 新 芦屋市山手町3-10
[写真3]ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸) 1924年 F.L.ライト、遠藤 新、南 新 芦屋市山手町3-10
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

03.安井武雄のデコ風モダニズム住宅「滴翠美術館」

再び開森橋で芦屋川を渡り、西方向にある滴翠美術館は、大阪のガスビルを作ったころの安井武雄の作品で、山口財閥の山口吉郎兵衛の邸宅として建てられた。戦後、蒐集された美術品とともに美術館として公開されたアールデコ風のモダニズム建築だ。瓦屋根を載せたのは周辺環境への配慮だろう。芦屋川をはさんで旧山邑邸と向き合っている。

1933年 安井武雄 芦屋市山芦屋町13-3 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真4]滴翠美術館(旧山口吉郎兵衛邸) 1933年 安井武雄 芦屋市山芦屋町13-3
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

04.大正期郊外住宅の典型「旧山田歯科医院」

滴翠美術館から南へ向かい、阪急神戸線を越えたところの旧山田歯科医院は、大正時代の郊外住宅の典形だ。アーチになった玄関ポーチまわりなど、今でも設計の参考になる。屋根は元は瓦屋根だったかも知れない。おもしろいのは窓の上にモルタルで小庇を作っているところで、これも大正期の手法だ。

1924年 久保田工務店 芦屋市西芦屋町7-3 出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋
[写真5]旧山田歯科医院 1924年 久保田工務店 芦屋市西芦屋町7-3
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋

05.阪神大震災に耐えた免震構造「芦屋仏教会館」

芦屋川沿いにJR神戸線を越えたところにある芦屋仏教会館は、芦屋に住んでいた丸紅の創業者伊藤長兵衛の建てた会館だ。片岡安にしてはあっさりとした設計で珍しい。サッシは取り替えられているが、内外部ともほぼそのまま大切にお使いになっている。驚くことに免震構造になっているそうだが、阪神大震災でそれがどう働いたのか興味がある。

1927年 片岡 安 芦屋市前田町1-5
[写真6]芦屋仏教会館 1927年 片岡 安 芦屋市前田町1-5
出所:『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ増補改訂版』(エクスナレッジ)より抜粋