定年後の生活について、不安を抱いたことがあるという会社員は多いでしょう。学費やローンの支払いが残っているのに雇ってもらえず働けない……そんな悩みを抱える定年退職者も少なくありません。そこで、定年後も賢くお金を稼ぐ方法について、『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)の著者で公認会計士の田中靖浩氏が解説します。
雇ってもらえない…定年後の元サラリーマンを襲う「働きたくても働けない」問題。公認会計士が提案する“意外と簡単?”な解決策とは
定年後も働ける“小さな商売人”を目指す
高齢者になって生き苦しさを感じる大きな理由が「選択肢のなさ」です。
とくに苦しいのが「働きたくても働けない」状態。まだ学費やローンの支払いが残っているのに働けない。これは経済的にも精神的にも厳しいです。
「仕事=誰かに雇用されて働く」と狭くとらえてしまうと、高齢者が働ける職場はごく少ないです。現役中に培ったノウハウや知識を活かせる仕事はさらに少ない。歴史的に見ても、高齢者の仕事はキツくて低給の単純労働ばかり。
「雇われる」ことは難しい──これが高齢者労働の現実です。
ならば雇われることは諦め、フリーランスになるのはいかがでしょう?
そう言われても、「自分には無理だ」と思う方がほとんどだと思います。
そんな方に問いたいのです。
「あなたはフリーランスについて、何も知らないだけではないですか?」
サラリーマンからするとフリーランスは、特別な能力や専門的知識をもった「自分のような凡人とはちがう特殊な人間」に見えるかもしれません。でも決してそんなことはありません。
たしかにすごい能力をもった人はいますが、ほとんどはあなたと同じレベルの凡人です。ただし「自分で稼ぐための努力」はしています。その日々の努力の内容が、サラリーマンとまったくちがうのです。
ときにそれは真逆の方向性です。会社では、「誰かがいなくなっても仕事が回る」仕組みをつくろうとします。
しかしフリーランスで「自分がいなくなっても仕事が回る」状態になったらアウト。「自分がいないと仕事が回らない」状態をつくるために全力で努力するのです。
フリーランスは小さな商売人です。かつての50年前、日本中のあちこちに小さな商売人がいました。彼らは自分のお店を出して商売し、家族を養いました。あの頃の商売人はモノを売ったりレストランを開店することが多かったですが、いまはサービス業が多いです。
自分のノウハウやサービスを売る令和の商売人、それがフリーランスです。
ここまでの50年、わが国では商売人が減ってサラリーマンが増えました。サラリーマンのほうが給料が高く、仕事もおもしろく、老後まで保障してくれたからです。
しかし再び変わり目がやってきています。
サラリーマンの老後に不安が出てきたいま、定年後も働ける小さな商売人を目指すことには大きな意味があります。雇ってもらえなくても、「自分で働く」選択肢をもつ。それだけで気分が楽になります。定年後「働こうと思えば働ける」自分になるべく努力することで経済的にも精神的にも余裕ができるはずです。