NHKの連続テレビ小説や大河ドラマなど、「始めと終わりは何となく覚えていても真ん中のストーリーは覚えていない」なんてこと、ありませんか? それは学んだことの最初と最後が記憶に残りやすいという脳の特性のせい。そんな特性を生かして記憶力を底上げする仕組みについて、著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)より、 加藤俊徳氏が解説します。
大河ドラマの始まりと終わりは覚えていても真ん中がすっぽり抜けているのはなぜ?記憶力定着の仕組み【脳内科医が解説】
復習するときはテキストの真ん中からスタートする
脳の特性の1つに学んだことの最初と最後が記憶に残りやすいということがあります。
逆に言えば、真ん中のことは記憶しにくいということ。
復習をする際は、真ん中からと意識的に順番を変えることで、知識をまんべんなく身につけていくことができます。
私のクリニックでは、脳診断の一環として患者さんに3行の簡単な文章を読んで覚えてもらうことがあります。試しに、あなたも挑戦してみてください。
どうでしたでしょうか。
ほとんどの方が、1回読むだけでは文章の最初と最後だけを覚えていて、真ん中はすっぽり抜け落ちてしまいがちです。
半年にわたって放送されるNHKの連続テレビ小説や、1年間放送の続く大河ドラマでも、過去の作品の始まりとエンディングはよく覚えていても、途中にどんなエピソードがあったかまで詳細に覚えている人は少ないでしょう。
実際に、真ん中の記憶がすっぽり抜けてしまうことは、実験心理学で証明されています。
行動心理学の用語で「初頭性効果」「新近性効果」と呼ばれるものがあり、最初の記憶と最後の記憶が短期記憶として残りやすいということがわかっています。
初頭性効果というのは、いくつかの項目を提示されたとき、最初に目にした項目ほど記憶に残りやすいというもので、1946年にポーランドの心理学者ソロモン・アッシュによる印象形成の実験によって明らかになりました。
2つのグループに、ある人物について次のように伝えます。
A「明るい、素直、頼もしい、用心深い、短気、嫉妬深い」
B「嫉妬深い、短気、用心深い、頼もしい、素直、明るい」
B「嫉妬深い、短気、用心深い、頼もしい、素直、明るい」
どちらも同じ形容詞が並んでいるのですが、最初に伝えられた言葉によってAのグループはポジティブな印象を抱き、Bのグループはネガティブな印象を抱きました。