「勉強したはずなのに、思い出せない」試験本番で誰もが一度はそんな思いをしたことがあるのではないでしょうか。脳内科医の加藤俊徳氏によると、記憶力で覚える力以上に大事なのは「使いたいときにいつでも覚えたことを引き出せる能力」とのこと。著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)より、 加藤氏が解説します。
アウトプットを意識しながら勉強する
「勉強したはずなのに、思い出せない」
試験本番でこのようなことがあっては困ります。
記憶力がいいというのは、覚える力も重要ですが、それ以上に大切なのは、使いたいときにいつでも覚えたことを引き出せる能力です。
その能力を高めていくには、常にアウトプットを意識した勉強法を心がけることが大事です。
8つの脳番地の役割は、インプットとアウトプットに分かれています。
目や耳から情報を取り入れて、理解して記憶する。これらに関連して働く[視覚系・聴覚系・理解系・記憶系脳番地(+感情系脳番地)]は脳に情報を届け、知識を蓄えるインプットの役割を持ち、脳全体の後方に位置しています。
心が動いたり、頭を働かせたり、実際に行動に移したり、誰かに相談したり伝えたりする[感情系・思考系・運動系・伝達系脳番地]は、インプットに関連する脳番地が集めてきた情報により、次のアクションを起こすことからアウトプットに分類され、脳の前方にある前頭葉の周辺に位置しています(感情系脳番地は脳の前後に位置し、インプットとアウトプットの両方に関わっています)。
脳の後方でインプットした情報を脳の前方へと送り、アウトプットをする。
この一連の流れがスムーズに行われているときが、脳が活性化している状態です。
家から駅へと向かう道のりで、私たちはたくさんのものを見て、聞いています。しかし、どれも記憶にはほとんど残っていないはずです。
いつも通る道のどこかで建物が取り壊されて空き地になっていても、以前そこに何があったのかを思い出せないように、私たちは、見ているようで見ていないのです。
なぜなら、日常の風景という情報は、アウトプットする前提でインプットしていないから。そこに何があったかを思い出せるようにするためには、見たものを情報として認識し、それを理解して記憶したのちに、アウトプットを担当する脳番地へと情報を引き継ぐ必要があります。
この脳の連携プレーこそが、脳の機能を高めていくポイントです。
脳の連携プレーを高めるために活躍するのが、伝達系脳番地です。
より効率的に伝達系脳番地を活性化させる方法の1つが、アウトプットをすることであり、インプットの時点からアウトプットを意識して取り組むことが重要になります。伝達系脳番地は、インプット機能をもつ理解系、記憶系、聴覚系の脳番地と密に連絡路を形成しています。
これまでと同じ時間をインプットに使うとしても、インプットの際にアウトプットを意識するだけで、脳連携が強化されて働きをガラリと変えることができます。