国土交通省「マンション総合調査」によると、日本の約8人に1人がマンションに居住しているそうです。また分譲マンションの世帯主は60代が27%ともっとも多く、50代(24%)、70代(19%)と続きます。分譲マンション住人には、それぞれのライフステージに応じたさまざまな悩みがあるようで……『60歳からのマンション学』(講談社)より、マンションの買い替えを検討する50代夫婦の事例をみていきます。
駅徒歩10分の都内3LDK物件に住む50代夫婦「退職金でも入ったら買い替えるか」…高齢化が進む“分譲マンション住人”の実態【専門家が紹介】
管理組合の第1回理事会で発覚した「長期滞納問題」
そうこうしているうちに、管理組合では新役員による第1回理事会が開催された。管理会社のフロント担当者から、管理組合会計の収支報告のなかで長期滞納について次の説明がされた。
「当管理組合には短期滞納者と長期滞納者がおり、一般的に管理費等は毎月決められた日に金融機関の口座から引き落としさせていただいていますが、どうしても給料日とあわずに毎月数日程度遅れてお振り込みされる住戸があります。あとはうっかりしていて残高不足になっていた住戸などは、滞納者とはいえ短期ですのであまり心配されなくてもいいかと思います。1ヵ月もしないうちに回収され解決になります。
問題は3ヵ月を超える住戸です。滞納期間が長くなるほど滞納金額も増えて、払うほうも払いたくても払えず悪循環に陥りやすいです。しかも、管理費等には時効があり、通常、管理費等の発生から5年間です。幸い5年を超えるような住戸はないのですが、3ヵ月を超える住戸、5ヵ月を超える住戸と14ヵ月の住戸があります」
14ヵ月を超える住戸は、管理会社による管理委託契約で定められた督促業務(電話、訪問、督促状)のあと内容証明郵便を発送し、次に管理組合として支払督促の手続きをし、相手から異議が出たため、裁判中だという。
管理組合と管理会社で締結している管理委託契約では、滞納から6ヵ月間の督促は管理会社の業務となっており、3ヵ月と5ヵ月の住戸には、引き続き管理会社が督促をするという。
「5ヵ月を超える住戸には普通郵便による督促状の送付、電話連絡などを継続的に行っているのですが、連絡すらとれず、らちが明かない状況です。内容証明を送付できればと思いますがいかがでしょうか?」との提案があった。
他の理事も送ったほうが良いということになり、費用はかかるものの内容証明郵便を送ることになった。
また2回目の大規模修繕についても説明があった。
「最近では15年周期などへ見直しも見られますが、一般的には12年周期で大規模修繕を行います。当マンションも10年ほど前の築12年の時に、屋上等の防水、外壁、鉄部塗装を行いました。計画ではあと2年ほどで2回目の大規模修繕の予定ですが、マンションの傷み具合によっては工事時期を先に延ばすこともあります。費用等はかかりませんので、まずは弊社の専門部署に建物の傷み具合を外観目視で行う簡易調査を依頼してもいいでしょうか?」
理事一同はそれを了承。
長期滞納問題に大規模修繕……スムーズな買い替えを妨げかねない“思わぬ壁”を前に、圭司さんは重たい足取りで理事会の会場を後にした。
日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表