「タワマンの大規模修繕」は困難

1997年の建築基準法の改正でタワマンが建設しやすくなり、ブームが到来したのが2000年頃。首都圏ではʼ03〜ʼ09年までに年間50棟以上のタワマンが竣工された。

タワマンの大規模修繕は、おおよそ15〜18年の周期といわれるが、これから首都圏では多くのタワマンで大規模修繕が予想される。一般的なマンションの大規模修繕の相場は国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目で1戸当たり約100万円といわれるが、タワマンの場合はそれよりも高くなることが多い。

たとえば次のような実例がある。

〇エルザタワー55(埼玉県川口市)……1998年築、地上55階建て、高さ185m、総戸数650戸、1回目の大規模修繕費約12億円(1戸当たり185万円)

〇センチュリーパークタワー(東京都中央区)……1999年築、地上54階建て、高さ180m、総戸数756戸、約17.5億円(1戸当たり231万円)

〇ザ・ガーデンタワーズ(東京都江東区)……1997年築、地上39階建て、高さ134.3m、サンライズタワーとサンセットタワー2棟で構成、総戸数470戸、約8億円(1戸当たり170万円)

このように、工事金額の総額が大きいため、長期修繕計画の試算が甘いと修繕積立金不足が起きやすい。特に物価上昇や消費税の増税を組み込めていなかった管理組合は、近年の工事費上昇についていけず、一時金の徴収や計画より遅い築20年前後で1回目の大規模修繕を実施するなどの対応をしている。

ただし、一般的なマンションの大規模修繕が10〜15年周期に対して、タワマンは15〜18年周期と後ろ延ばしが多く、1戸当たりは高くみえても実質的に安い場合もある。

修繕の施工業者が限られる

タワマンの大規模修繕はまだ事例が少なく、工法やノウハウが、広く一般に確立されたとまではいえない。

タワマンの構造上、特に高層階では風対策をはじめとした、特殊かつ高度な作業ノウハウが求められる。また工期も2〜3年と長期間に及ぶことも珍しくない。そのため、タワマンの大規模修繕を行うのは、新築時に建物を建設したゼネコンや、その子会社など一部の施工業者に集中するケースが多い。

足場は、一般的なマンションの大規模修繕で使用される「組み立て式」ではなく、屋上から吊り下げる「ゴンドラ」や、柱を立てて設置する「移動昇降式足場」を使用することが多い。そのため、飛散や落下防止対策のほか、風雨などの気象状況によって工事の進度が大きく影響を受けやすい。

また、外観フォルムが独特など“デザイン性が高いタワマン”は、高層階と中層階、低層階では、足場の種類、工事の方法を変えるなど複雑になることもある。

さらに販売時は魅力的だったラウンジやカフェ、スパやプール、屋上デッキといった共用施設やさまざまな設備は、独自性を打ち出していればいるほど、別途改修が必要で費用もかさむ。