国土交通省「マンション総合調査」によると、日本の約8人に1人がマンションに居住しているそうです。また分譲マンションの世帯主は60代が27%ともっとも多く、50代(24%)、70代(19%)と続きます。分譲マンション住人の高齢化が着実に進むなか、数年先の未来に待ち受ける「分譲マンション住人の深刻な問題」をみていきましょう。『60歳からのマンション学』(講談社)著者の日下部理絵氏が解説します。
終の棲家は「戸建て一択」から「マンション」の時代へ
人生100年時代と言われるようになった昨今、いまの60代は、気力・体力ともに充実したアクティブシニアが多い。
趣味や再就職など社会的活動をする一方で、そろそろ老後はどこに住むのが望ましいのか、所有している住宅はどうしたらいいのか、いろいろと模索しはじめる人も多いのではないだろうか。
アパート→マンション→戸建ての「住宅すごろく」が崩壊
かつて日本には「住宅すごろく」と呼ばれるものが存在した。住宅すごろくでは、賃貸アパートなどからはじまり、分譲マンションを購入後、戸建てに買い替えることがゴールとされてきた。その背景には必ず地価は上昇し続けるという土地神話があり、実際に転売を繰り返しながら資産を大きく増やせた。
住宅ローン減税やすまい給付金、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置といった行政のさまざまな支援策もその後押しをしていた。
しかし土地神話が崩壊した現在、かつての住宅すごろくの途中である分譲マンションを「終の棲家にしたい」という永住志向が高まっている。また、戸建てから分譲マンションに買い替える人も多い。
国土交通省がおよそ5年ごとに実施する「マンション総合調査」(2018年度)によると、「永住するつもりである」が過去最高の62.8%(2013年度より+10.4ポイント)という結果が出ている。
そんな分譲マンションだが、国交省によると、約675万戸(2020年末時点)あるといわれている。そして、マンションの居住人口は約1573万人と推測される。
マンション住人の「高齢化」進む
「60代」がもっとも多く、70代以降も増加傾向
つまり、いまや日本に住む約8人に1人がマンションに居住している。とりわけ都心部においては、分譲マンションに住むという居住形態は、一般的とすらいえる状況になりつつある。
実際、分譲マンションの世帯主は、前出の「マンション総合調査」によると、60歳代が27%と最も多く、次いで50歳代が24.3%、70歳代が19.3%、40歳代は18.9%とされる。30歳代以下にいたっては7.1%で前回調査7.8%より減少する一方で、70歳代以上は18.9%から22.2%へと増加しており、住人の高齢化が着実に進んでいる。
なお、完成年次が古いマンションほど70歳代以上の割合が高くなっており、1979年以前にできたマンションだと、世帯主が70歳代以上の割合は47.2%にものぼる。
築古マンションも増えている。2020年末時点における分譲マンション約675万戸のうち、築30年超のマンションは約34%の232万戸、築40年超も103万戸(マンションストック総数の約15%)ある。
しかも、2030年末には築30年超が約405万戸、築40年超がいまの約2.2倍の232万戸、さらに2040年末には築30年超で578万戸、築40年超のマンションでは、いまの約3.9倍の405万戸にもなると言われている。