国土交通省「マンション総合調査」によると、日本の約8人に1人がマンションに居住しているそうです。また分譲マンションの世帯主は60代が27%ともっとも多く、50代(24%)、70代(19%)と続きます。分譲マンション住人には、それぞれのライフステージに応じたさまざまな悩みがあるようで……『60歳からのマンション学』(講談社)より、マンションの買い替えを検討する50代夫婦の事例をみていきます。
駅徒歩10分の都内3LDK物件に住む50代夫婦「退職金でも入ったら買い替えるか」…高齢化が進む“分譲マンション住人”の実態【専門家が紹介】
管理会社からのお願いで、はじめて「管理組合役員」に就任
そんな時、管理会社から次期役員の就任をお願いする連絡があった。
このマンションでは、階数などフロアごとのブロックに分けて、輪番制で役員を選出している。じつは築22年目にしてはじめての役員。圭司さんの本音としては、やりたくないし、面倒だなという思いが強い。しかし、輪番制なのと自宅マンションのことなので致し方ないであろう。
まもなく、通常総会の案内が届いた。議案書という書類をめくると、最後に「役員選任の件」という議題があり、部屋番号と「加藤圭司」の名が記してあった。総会では無事に承認され、今後2年間、管理組合の役員を務めることになった。
総会終了後の役職決定で、圭司さんは理事長をすすめられたが、難色を示していたところ、別の男性が了承して、圭司さんは副理事長という役職におさまった。
新旧役員の引き継ぎをしている際、管理会社のフロント担当者から、「これから2回目の大規模修繕工事の検討を開始するので、今期の皆さまは大変かと思います。また戸数は多くないのですが、管理費等を長期滞納されている住戸がございます。詳細は次回の理事会時にご説明させていただきます」との説明があった。
総会が開催されていたマンション近くの公民館から自宅に戻る途中、圭司さんは役員が務まるのか不安になった。それは長期滞納者がいることを知らなかったこと、また階数は違うが翔太さんの同級生で子供を通して交流がある、佐藤さん宅が1回目の大規模修繕工事の検討時に理事長になり、「大規模修繕の検討は本当に大変」と嘆いていたのを思い出したからである。
駅近マンションへの買い替え計画の件だけど…
自宅に帰り、陽子さんにその話をしたところ、陽子さんからは「あなたの考え過ぎじゃないの」と明るく言われてしまった。
「それより、急いでるわけじゃないけど、駅近マンションへの買い替え計画だけど」と話題を振られた。どうやら陽子さんは、売却や買い替えするにはどうしたらいいのかわからず、ネットを見ていたら、「不動産一括査定サイト」というのを見つけたらしく、お金もかからないからと、すでに申し込みもしたそうだ。このマンションのいまの査定額がわかるという。
不動産一括査定サイトを活用→2社に訪問査定を依頼
その直後から数日間、複数の不動産会社からメールや電話で連絡が入ってきた。陽子さんが対応したが、彼女によると、不動産会社によって査定額がバラバラで500万円以上も差があるという。
不動産会社からは、いまの査定額は、実際の物件を見ずに、概要や取引データをもとに簡易的に査定した「机上査定」なので、実際に部屋を訪問しても大丈夫なら、より詳細な査定額を出せる、と言われたという。
こういうのを「訪問査定」といい、概要や取引データのほか、物件の使用状況や日当たり、周辺環境、敷地の形状、修繕履歴、管理状況、登記簿情報などを加味して査定価格を出すという。
陽子さんが対応した10社あまりの不動産会社から、担当者の感じが良かった2社に訪問査定してもらうことにした。なかには交通費程度のお金がかかる会社もあるが、この2社はお金もかからないという。