終の棲家の候補に挙げられる「老人ホーム」。仮に、現金がなく、一人暮らしでできない状態となった親を抱える場合にも、老人ホームへ入所させる手段はあるのでしょうか。本記事では、老人ホームへ纏わるさまざまな疑問について、老人ホーム事業を営む株式会社ハピネスランズの代表であり老後資金アドバイザーの伊藤敬子氏が回答します。
「生きているうちに家に戻りたい」年金月9万円、貯金ゼロ…借金して〈老人ホーム〉へ入居した80代おひとりさまの末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームに纏わる多くの人が抱える疑問

なぜ施設は何種類にもわけられているのか?

いまから23年前のちょうど2000年に日本でも介護保険制度がスタートしました。このときに以前からあった施設で介護保険の設備要件や人員基準を満たせるものは現行法に申請基準を合わせて変更されましたが、その枠に入らないものは現在も昔のまま残っているため、実は8種類以上のいわゆる「老人ホーム」があります。

 

それぞれに入れる対象者や期間にも特徴があります。たとえば「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者住宅」は運営企業の努力により実際は内容的に似た住み心地の場合も多く、見学してみるまで内容がわかりません。

 

なぜ最期まで同じ施設にいられないのか?

いまの法律では、高齢者に終の棲家はありません。現時点では、利用者の症状に合わせて、施設をどんどん住み替えるのが、日本の介護保険の仕組みです。

 

施設ごとに、その人員要件や施設要件(お部屋の広さや構造、設備)と提供されるサービスの内容が介護保険制度で厳しく細かく法律で決められています。施設側はすべて法律を遵守しなければ介護保険で保険料を受け取ることができないため、利用対象者や提供するサービス内容をどのように位置づけるかで著しく施設側の収入が変わってきます。施設側は保険収入を運営費に充てている以上、自由が利かないのです。

 

これによって、施設が利用者さんに合わせて介護のさまざまな段階に合わせたサービスを変化させること自体できなくなっています。

 

老人ホームとして人気のある「特養」や「認知症グループホーム」は誰でも入れるのか?

入れません。特養なら要介護3以上、認知症グループホームなら要介護2以上の方しか入所できません。

 

そのため、家族が親の異変に気が付き、たとえば一人でご飯が作れないなどの日常生活に支障をきたしていたとしても、医師の診断書や認定調査員の判断で、要介護の1しか取れなければ、特養も認知症グループホームも入れません。つまり、認知症になってご飯が作れないぐらいだけなら、取得できる介護度はたいてい要介護1なのです。

 

そのため、いざ困ったときに有料老人ホームであればお金を出せば入れるのに、安価な施設はそもそも入れてもらえないわけです。

 

待機待ちの多い安価な施設「特養」なら月額費用は年金だけで足りる?

もらっている年金額によります。2023年厚生労働省によると、年金の平均時給額は14万5,665円です。東京の目黒区にある特養の利用料金は17万円/月~であり、個室はさらに個室料金がかかります。

 

では、数多ある老人ホームのなかで、費用負担をできる限り抑えて自分の親に合ったホームを選ぶにはどうすればよいのでしょうか? 月20万円以上の年金を受給している、比較的現役時代の収入が安定していて年金をしっかりと受け取っている元公務員や、同じく現役時代収入が多かったために年金が多い元サラリーマンであれば足りるかもしれません。しかし生活保護世帯や困窮世帯にはいろいろな救済措置があります。とにかく特養といっても、ある程度の貯金やお子様の支援が必要になるケースが多いのです。