終の棲家の候補に挙げられる「老人ホーム」。仮に、現金がなく、一人暮らしでできない状態となった親を抱える場合にも、老人ホームへ入所させる手段はあるのでしょうか。本記事では、老人ホームへ纏わるさまざまな疑問について、老人ホーム事業を営む株式会社ハピネスランズの代表であり老後資金アドバイザーの伊藤敬子氏が回答します。
「生きているうちに家に戻りたい」年金月9万円、貯金ゼロ…借金して〈老人ホーム〉へ入居した80代おひとりさまの末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分の親に合ったホームを選ぶには?

年末里帰りして、両親が予想以上に老化していてびっくりした経験はありませんか? そんなとき、かかりつけ医や相談したケアマネージャーに施設を勧められることがあるかもしれません。

 

そうはいっても、シニア大国・日本の老人ホームは特養、認知症グループホーム、有料老人ホームの合計だけでも約4万軒といわれています。数多ある老人ホームのなかで、私たちはどのように自分の親に合ったホームを選ぶのが正しいのでしょう?

大前提「みんな老人ホームなんかに入りたくない」

まず大前提として、始めから老人ホームに入りたいという人はいないでしょう。それは若者でも高齢者でも同じです。自分の親には最低でも月10万円かかる老人ホームなんかへ入らずに、少しでも長く健康に暮らし続けてほしいと、多くの人が思っているはずです。

 

しかし、人生には等しく終わりがあり、一人暮らしができなくなるほど、人はいつか老いるのです。それにも関わらず、50~60代、70代でさえ「老いる」ということが、本当の意味でどのようなことなのか想像できません。なぜなら「老い」というのは、「ほんの少しずつ起こる日常の変化で、患っていることが日常である状態」を指すため、客観視しづらいのです。 

 

よく「認知症になったらしょうがないから老人ホームにはいる」という方がいます。しかし、認知症は脳の病気の一種であり、精神病を患う方が自分を病気と思わない、という例があるように、認知症も「病識がない病気」です。そのため、たいていの場合、本人は気が付きません。老人ホームは老化に備える危機意識の高い方たち「賢明なシニアだけが自ら選択する住まい」であり、そうでない場合は子どもや家族がその人を想って「心配だから、入ってもらう住まい」なのです。