「話し方」は人の印象を左右します。いざというときに人を惹きつけるには、事前の準備が大事。『60代からの見た目の壁』(株式会社エクスナレッジ)の著者で医師の和田秀樹氏が解説します。
「スピーチが上手な人」は見た目も若い!?東大医学部卒の医師が語る〈話術〉の重要性
ケネディとニクソンの演説術
アメリカの第35代大統領のジョン・F・ケネディ氏は、若いころから勉強ができて、優秀な学者肌の政治家でしたが、もともとは演説が下手だったといわれています。
それに対して、第37代大統領のリチャード・ニクソン氏は演説が上手な政治家だったといわれています。この2人は60年の大統領選挙で争うのですが、下馬評ではニクソンが優勢でした。そこで、ケネディは優秀なスピーチライターを雇って、リハーサルを繰り返し、テレビ討論会でも名演説をして、最終的に選挙に勝って大統領に就任したわけです。
日本の政治家にも見習ってほしいと思いますが、上手に話すためにリハーサルが重要であるのは、一般人も同じです。
人前で話す機会はそんなにたくさんないのですから、そのときのためにリハーサル(練習)しないのはもったいないと思いませんか。
みなさんは結婚式でスピーチをするとき、練習しているでしょうか。スピーチをして注目されるのですから、こういうときこそ見た目が大事です。とくに60代以降の世代であれば、時間もたくさんあるのですかから、自分をかっこよく見せるために練習をするべきだと思います。
最近の漫才やコントは芸人たち自身で台本をつくっていることもありますが、昭和の時代の漫才には基本的に座付き作家というのがいて、作家が書いた台本を一生懸命練習していたといいます。
アドリブに見えるようなかけあいも、実際はアドリブではなかったともいわれています。そのくらい稽古を繰り返していたようです。
漫才の名人と呼ばれた横山やすし・西川きよしの漫才にも、座付き作家の台本がありました。
もちろん、稽古していく中でのアレンジやアドリブもあると思いますが、基本的なストーリーはみんな同じ。それをよりおもしろおかしく見せるために稽古を繰り返し、「やすきよの芸」に磨き上げていったのでしょう。
かつて会社員であった人は、会社に就職するときに面接を受けたことがあるでしょう。そのときに練習して行きましたか? 面接でよい印象を持ってもらうためには、ちゃんと練習しているかどうかが大きいのはいうまでもありません。
努力をしないとうまくは話せません。居酒屋でここぞというときに話すネタを持っているなら、原稿にして練習してみるとよいでしょう。
練習すれば、ここは言い回しを変えたほうがよいとか、ここで話を盛り上げればよいのかな? といったことがわかります。
その努力が本番に発揮されないわけがありません。人前でみんなに注目されたいと思ったら、スピーチのリハーサルをすることをお勧めします。
私もリハーサルまではしませんが、誰かと会う約束があると、その相手に合わせて、何を話せばよいかよく考えてから臨みます。
それを頭の中でシミュレーションしておくだけでも、人が聞いておもしろいと思う会話ができると思います。
和田 秀樹
医師