健康にこだわりすぎた結果、血圧や血糖値、コレステロールの数値は優等生でも、実年齢以上に“見た目が老けている人”も少なくありません。そんななか、『60代からの見た目の壁』(株式会社エクスナレッジ)の著者で医師の和田秀樹氏は「65歳を過ぎたら“健康至上主義”は捨てるべき」と断言します。いったいなぜなのか、詳しくみていきましょう。
老けたくないなら「肉」を食え!?…東大医学部卒の医師が「健康至上主義は老ける」と断言するワケ
たんぱく質を摂らないと歩けなくなる
見た目が若いか老けているかを決めるのは、顔だけではありません。たとえば、歩き方がヨタヨタしている老人は、若くは見えませんね。
若い頃のようにスタスタ歩けなくなる原因の1つは、歩く習慣が少なくなること。いわゆる運動不足によって高齢者は歩けなくなります。
コロナ禍の3年間、「高齢者は外に出るな」と言われ、それに素直に従った高齢者は筋力低下で歩けなくなってしまいました。
では運動の習慣、といっても歩くだけでよいのですが、それを始めるだけで、筋力は回復するのでしょうか。残念ながらそれだけでは回復しません。
何が必要かというと、筋肉の材料を摂ることです。筋肉の材料はたんぱく質ですから、この栄養素が不足しがちだと、普段から歩いていても、だんだん足腰の筋力は低下していきます。
筋力低下が進むと、歩くのも大変になりますから、コロナ禍のように家に閉じこもりがちになります。
そうすると、ますます筋力低下が進みます。悪循環が進むわけです。そして筋肉が著しく低下すると、寝たきりになってしまいます。
寝たきりになる前に、脳の認知機能が衰えていく人もいます。家にこもっていることで、脳への刺激が少なくなることが原因です。
このように、歩くことは大事ですが、私は歩くために必要であれば、杖は積極的に利用するべきだと考えています。杖を使うのは恥ずかしいからといって歩くのをやめるより、杖を使いこなしてサッサと歩くほうが、かっこよく見えると思います。
杖を使いこなしながら、東京の銀座あたりをさっそうと歩いている高齢者は、とてもかっこよく見えます。また杖を使うことの利点は、転倒の予防になることです。高齢者の事故で多いのは転倒による骨折ですから、その不安がある人は杖を積極的に使用するべきだと思います。
でもせっかく杖を使うなら、おしゃれなものを選びましょう。いわゆる「ステッキ」と呼ばれるような杖です。
ヨーロッパの高齢者は、おしゃれなステッキをつきながら、かっこよく散歩しています。こういう道具にはお金をかけてよいと思います。
和田 秀樹
医師