平均年収443万円…専門性からすると「少ない」心理士の収入
このように、唯一の国家資格であり、国から正式に認定された「公認心理士」ですが、年収には恵まれていません。
厚生労働省が発行している職業情報提供サイト「Job Tag」によると、公認心理士を含めた心理士(カウンセラー)の年収は「443.3万円」で、平均年齢は「39歳」となっています。
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は男性が563万円、女性が314万円、男女計で438万円です。さらに年齢階層別に見たデータでは、35歳〜39歳では462万円、40歳〜44歳では491万円です。
つまり、国家資格を持つ「心のプロフェッショナル」であっても、平均給与は「日本の平均給与程度」あるいはそれ以下となっているのが現実です。
下記の[図表]をみても、年収のボリュームゾーンは「300万円以上400万円以下」にあることがわかります。
アメリカは約1,528万円、イギリスは約744万円…欧米の心理士は高い給与を得ている
では、海外に目を向けると、心理士の年収はどの国でも同じくらいなのでしょうか? 結論からいうと、それは「否」です。
たとえば、アメリカのIndeed社によると、アメリカの心理士の給与は年間「105,409ドル」と記載されています。1ドル145円で計算すると、アメリカでの心理士の年収は日本円で約1,528万円ということになります。
Forbes社によると、アメリカ全州の平均給与は「59,428ドル(約862万円)」となっていますので、アメリカの心理士はアメリカ人全体の平均給与の約2倍近くあることがわかります。
また、アメリカにはおよびませんが、イギリスの心理士の給与も日本より高いです。Indeed社の調査によると年間「40,201スターリング・ポンド」となっています。2024年1月の水準から1スターリングポンド185円で計算すると、日本円で約744万円です。
イギリスの「国家統計局 (ONS)」の調査によると、イギリスの平均給与は29,669スターリング・ポンド (約549万円)ですから、心理士の給与は平均給与よりも200万円ほど高いようです。
つまり、欧米諸国と比較すると、日本の心理士は低く評価されているといえるかもしれません。
◆まとめ…日本の「心理士」はもっと評価されていい
心理士は心の専門家であり、決して誰でもできる仕事ではありません。
にもかかわらず、日本の公認心理士による診療報酬は低く見積もられていることから、必然的に心理士の年収は一般の年収並みという状況となっています。
近年若者のあいだで深刻化する「オーバードーズ(薬の過剰摂取)」や年齢問わず増えているうつ病、適応障害……。現代社会で今後、心の問題を解決する心理士の需要はより高まると考えられます。
筆者は医師として、日本でも心理士の仕事がより適切に評価されるようになることを願っています。
秋谷 進
医師